仲間と一緒に全国に発信していきたいという気持ちがあるんです
― 「福岡」の居心地はどうですか?日常的なことでもいいですし、表現のことでも。
中村:そうですね~。日常は住みやすいですよ(笑)
― たとえばどんなところが?
中村:まず、食べ物はおいしいですし、都会な部分と中心部からちょっと離れれば緑もあって、都会と田舎の融合具合がバランスいいと思います。
― 表現活動としてはどうでしょう?
中村:先月私も役者として出演して関わらせてもらった「アームストロング コンプレックス」*1も「福岡盛り上げていこうよ!」というコンセプトでできた企画でした。福岡が活発になってきている感じはしますね。
映像の分野ももっと活発になって、福岡から発信していける機会がいろいろ増えていくといいですよね。
― 中村さんが福岡で活動されているのはなぜですか?
中村:そうですね~。たとえば東京に行って活動するという選択肢もあると思いますが、私は自分でユニット*2もつくって活動していたり、今一緒にやっている仲間と全国に発信していきたいという気持ちがあるんです。福岡からいいものを発信していけたらいいですね。
- *1 アームストロングコンプレックス…唐人町の劇場「甘棠館Show劇場」10周年記念公演。甘棠館を拠点とする劇団ショーマンシップと、次世代の演劇人によるジョイント公演。
- *2 ユニット…CAPRI。2006年結成。中村公美と鶴賀皇史朗によるプロデュースユニット。演劇・和太鼓・音楽など、ジャンルにとらわれない表現活動をしている。
この現場で自分は何ができるのかというのを考えるようにしています
― 舞台を始めたそのはじめの一歩は何だったんですか?
中村:それが、何がきっかけかは分からないんです。でもなぜか小さい頃から芝居をやりたいと思っていました。女優というより、テレビに出たいという感じです。
そういう気持ちが小さい頃からあって、高校のときに芝居をやりたいということで事務所に入りました。それが始まりで、それからずっと続けている感じです。
― 今まで演劇を続けてきて、やってきたことの手ごたえとかはありますか?
中村:手ごたえですか!?(笑)そうですね~ちょっとずつですが、客演として呼んでもらったり、応援してくれる人ができたりということはあります。でもゴールがないものなので、毎回一本、一本頑張っていくしかない!!という気持ちです。
― 劇団やユニットが活動の中心なのでしょうか?
中村:もちろん、それが活動の中心ですが、ありがたい事に外部に客演で呼んでいただく機会も少しずつ増えてきました。私が現場で意識していることは、演出家が何を求めているのかというのをできるだけ早く察知するということ。この現場で自分は何ができるのかというのを考えるようにしています。といっても、自分の役ですぐいっぱいいっぱいになっちゃうんですが(笑)呼んで良かったな、と思ってもらいたいですね。
― 今回、福岡・九州地域演劇祭『春、夜中の暗号』に出演して欲しいと連絡が来た時、どう感じましたか?
中村:『春、夜中の暗号』を演出される幸田さんとはお話したこともなかったので、何で呼んでいただけたんだろう?と純粋に思いました。幸田さんの劇団HallBrothersのお芝居を最近初めて観た所だったので、幸田さんってどんな人だろうという興味から入りました。
お芝居をやるのはもちろん好きなんですが、たくさんの人と出会えることが楽しいです
― ぽんプラザの10周年全体について、どのようにお考えですか?
中村:今回大学生から大先輩の参加するいろんな企画だったり、九州の各地からも来られたりだとか、ホント凄いなと思います。節目になる10周年という企画に呼んでいただけて、とても光栄です。お芝居をやるのはもちろん好きなんですが、たくさんの人と出会えることが楽しいです。
― 『春、夜中の暗号』の稽古場はどうですか?
中村:かなり緻密な演出が多いですね。でも「こうしろ!」とかではなく、私や他の役者さんが「自分はこう思う」という考えを話せばしっかり聞いてくださいます。
逆に幸田さんご自身の考えをしっかり役者にも話してくれるので、チーム一丸で試行錯誤しながら進んでいけていますね。
― 稽古が早い時期から始まったと思いますが、今の時期はどんな感じですか?
中村:今までこんなスケジュールは、あまりやった事がなく・・・。私が関わる公演は、稽古がだいたい1ヶ月半~2ヶ月位からやることが多いんです。なので、「3ヶ月前からやるなんて私大丈夫か!?」と思いました(笑)。
前半に稽古をぎゅっと詰めてやったあと、途中しばらく空いた期間もありましたが、それが色々考えることになったのでそれもよかったなと思います。
― 今回『春、夜中の暗号』というお芝居は、淡々とした静かなお芝居じゃないですか?日常的な風景の歪みが徐々に露わになっていくという。決して「わぁっ!」と明るいお芝居ではないわけですが、稽古場はどのような雰囲気ですか?
中村:(笑)そうですね、確かに静かですよね。私がやる役も明るい感じではないですね。私、稽古に入るとその役に入り込んでしまうんですよ~。明るい役の時には稽古に入る前や休憩中もそういう役が入り込んでテンション高かったりとかもあって。
なので今回の役でいうと、確かに稽古場に来るときから明るいテンションではないかもしれないですね。あ、でも楽しいですよ。本当に!!お芝居大好きなので。
― 北島マヤ
*3のように入り込む面があるんですかね(笑)
それでは最後に意気込みを聞かせてください!
中村:私がこれまで演じてきた役は、喋る役にしても、喋らない役にしても、一つ芯の通った人の役が多かったんです。ですが、今回私がやる「女」は、芯が揺れているような人物。でもその揺れているということをお客さんに、こうですよ、とはっきりと見せないようにしています。全体的にはっきり見せていく演出ではないですね。
でもそうやってはっきり見せない分、お客さんも色んな見方ができると思うんです。その中で色んな反応、感想が出てくる、ということができたらいいなと思います。そして、今まで私のお芝居を観てくださったお客さんにも、こんな役もやるんだという風に思ってもらえたら嬉しいですね。そんな舞台になるよう頑張りたいと思います!
(敬称略)
- *3 北島マヤ…漫画『ガラスの仮面』(美内すずえ)の主人公。千の仮面を持つと言われる天才女優。役柄と完全に同一化して天才的な演技力を発揮する。