キャスティング
男1 渡辺ハンキン浩二(事故により出演困難となったため、代役に野本則之さんが代役となります)
男2 末満智洋
女1 磯野倫子
女2 藤裕美
女3 面谷郁子
まず戯曲の解釈を説明します。登場人物の丁寧な言葉使い、秘めやかな感情(恋愛)の動き、ラストシーンの音楽に合わせて身体を動かす場面。若者でもなく、と言って熟年でもなく、でも妙に大人びた印象の人物たち。この人物たちがどの時代でこれらの行動を起こすのか考えた時、平成の時代ではないだろうと感じました。フィールドを十数年前の昭和の時代にする事でキャラクターが生き生きと動き出す事が出来るはずです。携帯電話は普及しておらず、フォークソングやモンキーダンスが流行した時代です。台詞で、キャリアやフリーターなど現代的な用語もありますが、あくまでも時代設定はイメージなので、別段気にしなくても良いでしょう。
次に、人物たちの感情の方向性が四方八方と広がっているのが、この作品の魅力です。しかし、むやみに広げてしまうと、観客に曖昧な印象をだけを残してしまう事も考えられます。そこで私は、誰かを中心とした群像劇に仕上げたいと思っています。
話は男1と女1を中心に展開していきます。「男1が女1に愛情を持っているが、女1はそれに気づかない。しかしラストのダンスでその事に気づいた。」この軸でストーリーを展開させます。そこに絡んで来る人間模様もひとつの見せ場となるでしょう。例えば、男1は男2が女1に好意を抱いているライバルだと思っている。女2は女1に敵意を持っているのか、それともそれは敵意を隠れ蓑にした愛情であるのか。女3と男2は想いを寄せ合っているのではないか。このように男1と女1を通して様々な状況を見せる事ができます。
演出のねらいとしては、5人の人物たちの旅を終えたその行く末は分からないが、5人の心情は明確にする、という事です。一場と二場の間に音楽を入れますが、軽やかな環境音楽のような心地よいものではなく、少し癖のある音楽を使用して二場で何か起きるのではないかという暗示を観客に持たせ、興味を引き付けて置きたいところです。
また、役者には台詞の言い回しではなく、誰かの台詞を受けたその反応や、台詞の後の表情、仕草、役者との距離感で各々の心情を見せる事で、とても面白い作品に仕上がると思います。つまり戯曲の行間を演出する事が重要です。
公演時間は短いので効果音は使用せず、音響も必要最小限に留める事で観客の集中力の妨げにならないように配慮したいです。
さて、上記で述べた時代設定をどこで表現するか。衣装や持ち物で表現するのもいいですが、終盤のダンスを踊るシーンで表現するのも一つの手になりそうです。女2が音楽をかけに行く。踊りたいと言った女3ではなく女2が音楽をかけるわけですから、音楽の準備はしていないでしょう。そうすると音楽はどこで手に入れるのか。おそらくラジオからの音楽という事になり、ラジオをつけるわけです。踊るのに都合の良いメロディーを探し、切り替えると聞こえてくるのは全て昭和の歌謡曲。時代背景に触れる瞬間です。
そしてまた、思いつきで踊る曲があたかも準備されていてはお膳立てしすぎるでしょう。こんな曲では踊らないといような曲で踊ってしまうのも、この5人の関係性を表すのにとても有効な手段のように思います。
最後に、私の考えるこの作品のテーマですが「秘めた思いを口に出さない美学」を観客に投げかけたいと思います。 |