森國 公演終わった後にアンケートを集めることが多いと思うんですが、今回はどうでしたか? 後藤 アンケートは取ってない。パンフ自体出していなかった。 百瀬 取ってない。うちの公演でもアンケートは見ない。 日下部 HANARO projectの1回目の試みだったんで、そこまで言えなかった。フィードバックまで意識が働かなかった。 山下 韓国では、劇評文化があるんじゃないかな?評論誌に出すとか、新聞に載るとか。そういう文化があって、お客さん個人個人の反応というよりは、おおやけにしてっていうのがあるんじゃないかな。 森國 もしかしたら、知らない所に載っている可能性もありますね。 山下 けっこう載っていると思いますよ。グレコで2、3箇所公演後に掲載されていた。 百瀬 (韓国は)口コミが強そう。 森國 twitterとかは流行っていた? 百瀬 シンポジウムの時にはツイッターをリアルタイムで流していましたよ。 森國 ツイッターが流されていたということをおっしゃっていたのですが、会場にスクリーンがあってそこに映しだされていたのでしょうか? 百瀬 そうですね。会場にスクリーンがあって、リアルタイムで映しだされていました。向こう側の劇場のチョンチュンナビ・アートホールが主催したシンポジウムですね。 日下部 twitter、facebook、line、カカオトークあたりは流行っているみたいですね。 百瀬 そういうSNSを積極的に取り入れないといけないんだと向こうの方が言っていた。 森國 自分たちでSNSを積極的に取り入れようと動こうと思っても、見つかりにくいですよね。例えばtwitterで公演の感想が韓国語で出ていたとしても、韓国語が読めないとそのツイートを拾えないし、見つけれないという感じですよね。 日下部 そこは通訳とかうまく使いながら。通訳の方にも制作的な意識を増やして欲しいところですね。 森國 「韓国公演を終えてみての気付きが、いろいろあると思います。その気付きの中で今後の作品作りに影響を与えそうなものはありますか?」 百瀬 そうですね。言葉が通じないところでやったので、言語っていうものをもう一度考える機会になったので、次回作には影響があると思います。 後藤 大きな影響は多分与えない。国が違っても同じ国の人でも、伝わるかな?という不安はいつもあって。自分が思っていることと他者の思っていることが解離してる部分はたくさんあるから、同じ感じで試していくことになると思う。 山下 一番感じていることは、1年ぐらい前、自分の中で、芝居に対してだったり表現に対して、どうなんだろうな、と思っていた時期だった。そこから韓国の方と知り合って、「いいんだよ!そのままやっていけば!」と言われたような気がしたんです。 森國 再確認できたような? 山下 そうですね。それもまた自信にもなったし、これから先何年かやり続けるための原動力となる。それはものすごく感じた。 森國 やりたいという時に、どうすればいいか? 日下部 福岡釜山交流ひろばに相談いただければ(笑)。 山下 やっぱり聞いたほうがいいですね。経験したことしか財産として残せて無いから。 百瀬 (福岡と釜山との)ネットワークが出来つつありますからね。 日下部 なんで福岡釜山交流ひろばを立ち上げたかっていうと、釜山で出会った方で本当は映画監督になりたかったとか、本当は演出家になりたかったという人たちが人のお世話をする役職に就いている。例えば、劇場の管理をしている人がいたりとか。それを見た時に、それは素敵だなと思って。そういう社会が無いとうまくいかないだろうっていうことを釜山で感じて。そういうことが目的で福岡釜山交流ひろばを立ち上げた。そこには演劇人にもいっぱい入ってもらっているので、すぐにいろんな条件に合わせて返答できるようにしている。 これが九州・福岡にいるだけだったらそういう思いにはならなかっただろうと思う。 遠慮無く相談してもらえたらと思います。むしろ、今はチャンス。まだまだ一部の劇団しか公演をしていないので。 森國 海外公演は一つのステータスとなると思うんですけど、どれぐらいの予算を考えていたらいいんでしょうか? 日下部 助成金から始まらないと現実的には難しい。特に若手は。それから、助成金がとれなかったら即実行というのは難しい。ただ、助成金をきちんと申請して、本公演と抱合せてとやれば可能です。 山下 難しいところなんですが、福岡市文化芸時術振興財団の助成金(ステップアップ助成プログラム)だとちょっと違ってくる。助成金の対象となるのが、福岡での公演の分だけなので。 日下部 釜山公演をする団体や、HANARO projectの活動は始まったばかりなので、これからはもうちょっと助成金だけに頼らない仕組み作りが必要になってくる。企業スポンサーなり、韓国の企業はいっぱい日本に来ているし、日韓のビジネスって山ほどあるから、そこは先陣切って公演して走っている演劇人の先輩たちと、開拓をしていくことから始めていかないとかないといけない。 山下 目安としたら、東京公演を打てるんだったら、釜山でも公演は打てると思う。 森國 劇団の体力と、予算面の体力として、という意味ですよね。 百瀬 東京公演っていってもいろいろあるけどね(笑)。 日下部 どういう形でもいいけど韓国に対して興味がないとね、目的なり。そこの問題のほうが大きい気がする。 百瀬 目的というか、作り手としてのメリットとしては、(釜山は)演劇の土壌が耕されていて、なおかつ深くて大きい。俳優もみんなうまい。そういうところで、自分たちがどうなのかということを認識するという意味では、東京行くよりは釜山で公演をして自分たちはどれくらいのレベルなのか感じて帰ってくる方が、よっぽど意味があると思う。 後藤 役者は特に刺激になると思います。向こうの役者は上手いですもんね。 山下 体が本当にしっかりしている。 百瀬 向こうの演劇教育っていうものがしっかりしていて、大学1年の時から4年間演劇の勉強をしてっていう環境。演劇受験というのがあるんですからね。そういうところで、刺激を受けてくるっていうのも意味があることだと思います。 日下部 韓国全土で演劇に関する大学は65以上ある。やりたい人に言っておきたいのが、(韓国側と)やり取りをする上でうまく伝わらなかったりというのがある。まずは言葉の壁。そこにつきるかなと思います。そこでくじけちゃうと(公演が)実現しない。 後藤 うちの場合は何度挫けそうになったことか(笑)。乗っている船だから降りるわけにもいかないし、言葉のすれ違いがある中で、最後はやるしかない!という感じ。トタトガのレジデンスの方とか、向こうの若手の演出家の人たちとは交流できた。 森國 山下さんは、何がきっかけとなったんですか? 山下 出会った人への恩返し。一緒にやりましょうね、と言っていたことを実行に移した。去年の目標が、ちょっと無理をしよう!というのが自分の中での目標だったので、それに向かって突き進んで行った。劇団として昨年1年間は活動を休止していたので、それを再開させる劇団としての勢い付けのためにもかなり無理をしてでもやりたかった。やる前は僕も「やるしかない!」という気持ちになっていた。次回からは余裕を持ってできそうではある。 日下部 気持ちと気持ちで動いていくことからしかスタートできないんですよね。今年は福岡のいろんなの公演が釜山であって、それが実現したっていうのはかなりハイペースなことだと思います。立て続けにありましたからね。 森國 多かったですね。 百瀬 それぞれが繋がっていない結託してないところがいいね、同時多発的、ゲリラ的な感じで。 日下部 いい距離感だと思います。 百瀬 そうですね。(今後は)福岡としての戦略を持って、釜山をつながっていければ今後面白い展開になるなとは思った。 日下部 芝居のクオリティーと成果の部分と、制作的な戦略の部分を、同時進行で考えていく必要が今後の課題としてはある。 後藤 ネットワークが広がっていくっていうのは、これからぐんぐん勢いが出てくる若手にっとっては魅力ですよね。 山下 そもそも、韓国に興味がなかったら、まず公演できないと思います。 日下部 興味が無いと続かないですよね。 森國 福岡が韓国に近いので興味を持ちやすい環境というのはあるかもしれないですね。 日下部 どういう理由で行ったとしても僕はいいと思っている。海外に出ることで得られるものは、必ず自分に帰ってくるので。例えば、日本人ってなんなんだとか、日本で演劇を作ることはどういうことなんだろうっていうこととか。それは早い内に経験してもらえると。それで一番近い大都市でチャレンジしてみる。 森國 行こうかなと思った時にこれだけ行っている人がいると心強いですね。 山下 韓国に興味をもったきっかけは、韓国の女性アーティストの「少女時代」というグループを知ってからかなと思った。少女時代が日本に来てから、韓国のそういうビジネス形態があることにびっくりして興味を持った。小学生のころからそういったアーティストの育成にお金をかけている。 百瀬 お金をかけて国がエンタメを支援している。日本では信用されていないけど、韓国だったら演劇で食べていけるかもしれないんですよね。 日下部 あんまり先入観なく入った方がいい。フラットに、人と人とが付き合うところから初めるのがいいと思う。それから興味があるところへアプローチできればいいと思う。福岡の演劇がどう面白くなるかが大事。
インタビューを終えて これまでも、福岡の劇団が釜山で公演することはあったのですが、2014年は立て続けに福岡の劇団が釜山に渡る、釜山イヤーとなりました。 海外での公演を行う劇団は福岡以外にもたくさんあると思いますが、そのアウトプット(結果)とアウトカム(成果)を個人的に伺う機会はあっても、劇団の活動として演劇関係者やお客さんに伝わっているかを考えると、疑問符がついていました。なぜ、海外公演の結果と成果は見えにくいのか、個人的にそんな裏テーマを持ちながら、今回の座談会を行いました。 海外で公演をする、というところまでは日本にいても伝わってきます。 また、海外公演を行うと、否が応でも「言葉」や「文化」に向き合わざるを得なくなります。今回、釜山での公演を経て、みなさんが強く意識された部分は、言葉以外の身体性だったり、文化を越えて人が普遍的に共有する感情だったりと色々ありました。 長い準備期間とたくさんの思いを込めておこなう海外公演。
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主催・協力等
主催:NPO法人FPAP
後援:九州地域演劇協議会