森國 釜山公演をやってみて、現地での観客席の雰囲気はどうでしたか?日本で公演をするのとお客さんの反応が違うなと思った点や、思っていた以上に反応が良かったなという部分などありましたか?

山下 グレコの場合は、お客さんの乗りがよかった。お客さんは積極的に参加してくれて、「違う!」みたいな掛け声がでたり、口笛を吹いたり。寄席に近い感じ。普通に参加してくれた。 嬉しい事が劇中にあったりしたら、手を叩いて喜ぶとか。そういうのは今まで日本では見たこと無かった。今回釜山公演を行った『晴レタラ、見エル。』という作品は、字幕を使ったり、ノンバーバルな身体表現作品というのではなくて、日本語と韓国語を合わせて出てくる作品だった。 韓国は日本語を勉強している方はたくさんいらっしゃって、ちょっとでも日本語が分かる人は、僕達の作品を見た時に自分の体験として感じるような追体験ができる作品だったので、その分作品の中に入ってもらえたのかな、という感じ。反応としては、韓国のほうがよかったです。

森國 ストーリーにすごくドラマ性があるので乗ってにきやすいというのもあったりするかもしれないですね。

山下 自分が体験したことをそのまま書いているだけなので、他の人も同じような体験をしているかもしれないですね。それに自分を置き換えて観劇するという人が多かったのかな、と思う。

日下部 日本人俳優が韓国語を話すことで距離感が一気に縮まったというのはあるんじゃないかな?

山下 こちらの計算した韓国語の使い方は通じてるんだな、という印象だった。それは面白い経験でしたね。

森國 後藤さんは『タンバリン』という作品を釜山公演してみて、どうでしたか?

後藤 トケビさんと一緒に公演をした関係で、トケビさんの公演の様子を見ていて、山下さんの言うことと同じ感じがした。すごくノリがよくて、お客さんの方からガンガン参加していく感じだった。日本人だったら、手拍子は誘導してもなかなか乗ってくれなかったり、終演後のトークでの質疑応答も手が上がらないのが普通だけど、韓国ではそういうものにどんどん参加してくれた。楽しもう楽しもう!という感じ。うちの公演になった時に、作品の中で手拍子をしたりというのは入ってなかったので、そういうことは無かった。なので、不思議と日本でやるのと同じ感じだった。お客さんが笑うところとか、真剣になるところとか日本でやった時と同じ反応でそれがとても意外だった。最後の質疑応答になったらどんどん質問してくれた。お客さんが積極的だなという印象だった。

森國 百瀬さんは言葉にあまり頼らない感じの作品をされていたと思うんですけど、日本と韓国で上演してみてどうでしたか?

百瀬 お客さんの反応自体は印象としては、日本と韓国で変わらないと思いました。ちょっと申し訳ないなと思ったのが、「日本のカンパニーが来たから、久々に日本語聞けると思って来たのに!」というお客さんがいて、帰り際に「(日本語が出てこなかったから)騙されちゃった〜あははっ」て言って帰って行っちゃった(笑)。

日下部 M.M.S.Tのお客さんの反応は、よかったと思いました。日本でやるのと受け止め方は違って、韓国でやった時は韓国語字幕が出ているので、日本語分かる方よりもわからないお客さんの方が多いわけですから、その人達に対して持ってたイメージと違うような演出があったから。百瀬さんが意図していたのとちょっと違うかもしれないけど、字幕は出ている状態で演出しているから、そのバランスがうまかったと思った。むしろ韓国の劇団の、俳優倉庫(ペウチャンゴ)より反応が良かったと僕は認識しています。

森國 韓国で上演する際に若干演出の意図的な部分で変えたりされましたか?

百瀬 意図は変わらない。演出方法が変わっていく。それは日々変わる(笑)。

森國 それは上演する場所がどこだからというわけではなくて、作品を上演してみてより良いものをということですか?

百瀬 そうですね。結論にいってしまうんですけど、どこでも変わらないなと思ったんですね。やっていくことは。

日下部 日本人俳優がそこにいて、韓国戯曲をやるっていうことについては全く変わらない。

百瀬 条件は変わらない。反応というよりも、劇場への来かたが違うなと思いました。

森國 劇場への来かた?

百瀬 やっぱり劇場に来るっていうのがそんなにハードルが高くないんだっていうのはすごく感じたので。それこそ社会の中で芝居を見るっていうことが、野球を見るっていうことと同じくらいの感覚であるんじゃないかな?って思いました。

森國 演劇が娯楽として一般的な感じになっているということですね。

百瀬 そうですね。いろんな層がいて、僕らの時は、劇場主催のシンポジウムみたいなものがあって、それに僕も登壇させてもらって韓国の人達とお話する機会があったんですけど。その時に、おじいさんの演劇通の人がいたりというのがあって、ある人は「演劇はこうでなければいけない」って言ったり、こっちでは若い人は「そんなことはない」って喧々諤々やったり。それがおもしろかった。

日下部 (文化の違いとして)ものはハッキリ言いますね。

森國 年代も幅広く来られていましたか?若者が多いとかではなくて?

百瀬 若者もいますし、お歳を召した方もいらっしゃった。いろいろな層の方がいるなぁという印象で、偏ってなくていいな、という感じだった。

山下 うちの時は、おじいちゃんとおばあちゃんの世代の方が、「今まで芝居とか見たことないっちゃけどみんな若いね。昔、強制的に日本語を喋らされてて、今は喋らなくなったけど久しぶりに日本語のお話があるっていうから来たんだ」ということで来て下さった方がいた。

森國 後藤さんのところは大学の近くの劇場で公演されたということですが、学生さんが多かったですか?

後藤 夏休みの期間だったので、学生さんというよりも、トケビさんを見た方が来たのかな?という感じだった。go to単独で来た人よりも。

日下部 どういう宣伝方法をするかとか、時期とか。もう少し検証しないと分からない部分もありますね。

後藤 チケットもどうやって買ってるんだろう、事前にトケビさんの方で宣伝して、当日お客さんが来たという感じだったんじゃないかなと。時期が違ったら客層が違ったかも。

日下部 韓国では演劇に興味がある学生さんの数が違うので。だから、学生さんが来るときはかなり来る。それが休み期間だったからあまり来なかったのかも。

後藤 本当に人通りの多い、学校の近くだったので、そうだったかもしれないですね。

日下部 その辺のプロデユースは向こうに任せているから、本当にもっと充実させようとおもったら、前乗りして制作しないといけない。日本の公演でも一緒ですけど。そういうことしないと(向こうに任せたままだと)コントロールできない。

  記事
 
ゲキトークトップページ
1 ステージ数、観客へのアプローチについて
2 劇場・劇場文化の違いについて
3 渡航先での宿泊、経費について
4 予算の分担、ファンドレイジングについて
5 ≫海外公演のアウトカム|観客の反応
6 海外公演のアウトカム|作品や作品作りへの影響
7 今後の課題、改善点について1
8 今後の課題、改善点について2

 

主催・協力等

主催:NPO法人FPAP
後援:九州地域演劇協議会

過去の関連事業 (実績レポート)

2012年ゲキトーク 2013年ゲキトーク 2014年ゲキトーク