森國 次、例えば韓国公演をするような機会があったら、ここのあたりは改善していきたいな、とか気をつけていきたいなということはありますか? 百瀬 (韓国には)いろんなネットワークがあるようなので、そこを向こう任せにせず、こっちも戦略をもってアプローチしていけば、全然繋がることのできない人脈というわけではない感じがする。そこはどんどんやっていかないといけない。やったらやっただけ、ちゃんといろんな人が来るんじゃないか、次にも繋がることにもなりうるので、次にやるときは、向こうにお任せっていうよりも、主体的に考えたいなと思いました。 森國 主体的に考えたい、という部分について、具体的にはどのような部分のことでしょうか? 百瀬 向こうが企画運営してしまうと、こっちは(公演を)やるだけになってしまうので、 少なくともこういう風なことがしたいっていうことをこちらで言ってから向こう側の賛同を得たいというのがある。 主導権を明確にというか。そういうことは、お客さんとして行くのではなく、主体的に言っていきたいと思っています。この経験を活かしていきたい。 後藤 ちょっとは頼らないといけない部分はあるけど、完全に制作関係のことを向こう持ちになることの方がちょっとストレスが溜まってしまう。いろいろと思ってることが進んでいかなくってとか。そこは進んで入っていかないといけないなと思った。(韓国の方との打ち合わせ段階で)小さな取り決めをしていったものが、「いや、言ってないよ」と無かったことになってしまったことがあって(笑)。何回も繰り返すしか無いなと思って。この部分を気をつけていても、言った言わない、そのつもりだった、そうじゃなかった、という話になるから。これは持っている生活や文化の違いだから繰り返す必要がある。 自分たちのこれからにつなげていくとしたら、事前に調べたりする必要があるんだなと改めて思いました。例えば、四国の方で公演をするというのと、韓国・釜山で公演するっていうのは基本的に一緒。行ったことがない場所だから。やっぱり事前の下調べとかをしっかりしないといけないなと感じた。 森國 海外公演を含め、色んな土地でやることで度胸がついて精神的にも強くなっていきますね。 山下 ことわざで、「始めるといったら半分終わっているんだ」と。(向こうの方の印象として)あんまり計画的ではない。やるぞ!ってなったらすごく短い期間で物事が進んでいく(笑)。 森國 やるまでが長いってことですね。 山下 急に向こうが盛り上がるんで(笑)。こっちとしては1年くらい余裕を持っていたんですけど、だいたい向こうが動き出したのが半年前くらいになってしまった。そういう国民性の違いみたいなものは分かっていた方がいい。 日下部 そこに日本人の戦略性や計画性をしなやかに入れていって、クオリティーを上げていくっていうのがやっぱり大事。 森國 ネットワークを活用とおっしゃっていたんですけど、ネットワークを強めていくとか、開拓していくというのは一筋縄ではいかなかったですか?やってみてネットワークが強まったなと感じたことはありましたか? 山下 それはある。釜山の方はネットワークがすごいある。受け皿もすごいし。関わっている団体とは違うんですけど、韓国ではどんどん広がっていっている。自然と。それは凄いと思う。より強く繋がっていくことは結構簡単なことなんじゃないかなと。 森國 具体的には、何をご覧になってたくさんあると思った、または感じたのでしょうか。 山下 具体的に言うと、1つ目に、釜山国際演劇祭があっていて観に行ったんですけど、トタトガの代表のキム・ヒジンさんのことを演劇祭に来ている人みんなが知っている感じで。そのキム・ヒジンさんは、もともと映画監督で、演劇などのアート支援をするためにセンター長をやっていらっしゃる方。(一例としてキム・ヒジンさんの名前を出しましたが)そういうネットワークが広がっていて、釜山演劇祭に行った人みんな知っているのが当たり前の状態に。内輪の集まりだなという印象ではなく、交流がちゃんとされているな、という印象。 森國 例えば、映画とか演劇とか特定のコアなファンというわけではなく、それぞれのジャンルのいろんな人たちが来ているネットワークがあるという印象だったということでしょうか? 山下 芸術という大きなくくりではあると思います。垣根を越えてつながっているな、という印象で、それが1つ目。2つ目に、『Plan Co』(プラン コ *韓国−日本 共同制作プログラム)といって、FFAC((公財)福岡市文化芸術振興財団)、NPO法人JCDN、LIG文化財団(韓国)、釜山文化財団(韓国)の4団体で立ち上げたダンスの国境を越えたコラボレーションプロジェクトがあり、そのダンス公演を観に行った時には、ダンス系の人たちでもそういった交流がある状態だった。 百瀬 そうなんですよね。日本で(公演をする)よりも、(釜山で公演することは)容易にいける感じがするので、挑戦してみるといいと思う。 森國 今後、ネットワークにもっと入っていくとか、具体的に何をどうしていくのかという今後のプランみたいなものはありますか? 百瀬 実は着々と進行している。このネットワークを通じて、釜山でのフェスティバルなどに参加することも考えているところ。 後藤 私は今のところは全くないですね。今回はもともと日下部さんからお話をいただいて行ったので、どちらかと言うと受け身だったので。日本でやりたいこともいっぱいあるので、それをいっぱいやってから、それから海外だったり釜山だったりそういうところに考えがいくようになると思う。 山下 僕達は幸せなんですけど、トタトガというところと繋がったことによって、代表のキム・ヒジンさんを始め、トタトガの皆さんがいろんな人を紹介してくださる。釜山に行けば、誰かを呼んでくれるとか、紹介してくれるとか。もしかしたら他の団体は違うこともあるかもしれないですが、トタトガと繋がっている僕達は、そういった手厚い対応をしてくださっているので、これからそのネットワークの広がりはあると思う。 森國 そういったところで交流して出会った仲間から派生していってネットワークが広がっていくということですか? 山下 そうですね。来年度以降の公演も考えてはいますね。 日下部 釜山のイメージって、人によって違うと思うんですけど、ものすごく大都市なんですよ。大阪市がだいたい270万人ぐらい。釜山広域市は350万人ぐらい。大阪市よりおっきな街。なんとなく、ソウルはでかいイメージだけど、釜山ってそんなに大きなイメージを持っていない人も多いと思う。行けばいくほど大きな街だってわかるんで、そんな大都市が200kmくらいの長崎の離島(五島列島)くらいの距離に存在するっていうところは押さえた上でやる。日本の端と、韓国の端っこなんだけど、一番近い街同士なんです。釜山のイメージ小さいと感じている人が一般の人は多いんじゃないかな。 森國 実際よりも小さく感じている人が多いということですね。 日下部 こうやって釜山に足を運んで公演をやってる人たちは、釜山の演劇人の多さとか、わかってきているので。それはいずれ福岡や九州のエネルギーになると思います。 森國 福岡と釜山との距離感についてのお話をいただいたんですが、釜山公演をするにあたって、事前渡航の必要性についてはどのように感じていらっしゃいますか? そして、限られた予算の中で、他の予算を一部削ったとしても、事前渡航に費用を割いた方がいいと思いますか? 百瀬 僕はとにかく行ったことがなかったので、劇場の下見を兼ねては行きましたね。 やっぱり行かないと分からないことはいっぱいあると思うので。劇場の使い方についてとか。 作り方にもよりますけど、僕は少なくとも(会場を)見てないとやっぱりちょっと作りにくいですね。 後藤 事前には必要ですね。打ち合わせと下見を兼ねて1回行きましたね。 劇場の使い方もそうですし、街の雰囲気だったり地下鉄の使い方だったり。 もう、(現地に)行って何とかしないといけない部分が多い分、できるだけスタッフのストレスを無くすためにも。 山下 これは100%行ったほうがいい。何も分からず公演を打つというよりも、現地の空気というかそういうのをまず知ってから公演するというのは必要だと思います。それをしてないと、いろんなすれ違いとかで疑問が生じたりとか失敗したなと思われたりする。それは、そういったところからだと思う。 森國 飛行機でなくても、フェリーを使って行くこともできますもんね。 山下 旅行プランのパックで行けばホテル付きで安いプランがたくさんある。そういうのをうまく利用する。あとは、事前に調べて行くことが大事。あと、トタトガもそうですし、日本と繋がりたいと思っている韓国の人たちって多くいると思うんです。その人たちを、まず味方というか知り合って、そこから韓国のことを知った上で公演をするっていうのが一番確実な方法なんじゃないかなと思います。
|
主催・協力等
主催:NPO法人FPAP
後援:九州地域演劇協議会