タイトル |
ゲキトーク 川口×斎藤×谷×橋本 とび出せ、地域を!やっただけで終わらない他地域公演 |
日時 |
2013年5月18日(土) 15:00〜17:00 |
会場 |
リノベーションミュージアム冷泉荘 |
パネリスト |
川口大樹(万能グローブ ガラパゴスダイナモス)、斎藤努(ゴーチ・ブラザーズ)、 谷竜一(集団:歩行訓練)、橋本理沙(万能グローブ ガラパゴスダイナモス) |
進行 |
高崎大志(NPO法人FPAP) |
0.はじまり
高崎:あついな、さむいなと思ったら、係員が温度を調整しますんでお声かけ下さい。今日は幸いに定員を超えまして。最後までお付き合いいただければと思います。
では早速ゲストの方から自己紹介をお願いしたいと思うのですが
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1.映像を交えながらゲストの芝居について
高崎:はい、じゃあ早速ですが、今回特に、谷さんと川口さんは演出家で、
どういう芝居をしているのか。というのを軽く映像で流したいなと思います。
では早速。どちらからでも。
これは万能グローブガラパゴスダイナモスですね。
(万能グローブガラパゴスダイナモスの映像)
高崎:一般的に言われる、シチュエーションコメディ?
川口:そうですね、シチュエーションコメディど真ん中ですね。時間もリアルタイムで。この作品を東京に持っていった、アゴラで。
高崎:役者も元気な感じですね。お客さんもニコニコして、楽しんで帰るような芝居ということですね。
川口:そうですね、難しさからは一番遠くにある。
高崎:いや、そんなことないと思うよ。
川口:ホントですか?(笑)
高崎:仕掛けとか、頭がよさそうな人が書いた本だなと思う。
川口:ホントですか?(笑)そうだったらいいですね。
高崎:だいたい今までずっとこういう感じの芝居を?
川口:そうですね、旗揚げが2005年なんですけど、一貫してずっとこのスタイルでやってますね。
高崎:じゃあ、今、8年目くらい?
川口:8年目です、今年で8年目。
高崎:で、まあだいたいこの先もこういった感じで。
川口:そうですね、ま、これしかできないっていうのが正しい表現かなと、正直。もうこれで行こうかなと思ってますね。
高崎:こうゆう公演やると東京の方のお客さん結構喜びますよね。
川口:ま、そうですね、なんか、本当にあのーなんですかね
演劇見たことないお客さんっていうんですか、演劇に馴染みのない人が特に喜んでくれますね。
(谷、パソコンで何やら作業を開始する)
高崎:谷さん内職はじめてるっぽい。
谷:いやいやいやいや。普通にメモとっているんです!
(一同笑)
高崎:じゃあ次は歩行訓練さんの映像をお願いします。
谷:(ウチの映像)出落ちですからね。
(一同笑)
(ビデオ映像)
谷:東京と北九州の枝光をツアーで公演した作品。
F/Tに出す用の、プロモーションビデオを作らないといけなかったので、その時に作ったもの。
2011年の映像。スタジオイマイチというアトリエでやっていたものを撮った。
高崎:結構音楽がかかっているシーンは多いの?
谷:音楽かかっているところは結構ありますよ。
高崎:役者同士の掛け合いみたいなところはなかったけ?
谷:中盤くらいになってくるとあります。500円お客さんに返す前提で、総予算を組み上げていて。その中から作品を見るのに、実際にお客さんがコストとして純粋に払ってるお金っていうのを、500円にちょうどあたるように。それを一回お客さんにお返ししてサンプルのテクストに従って演じている俳優に、500円を使って演出をどんどんつけていけるっていうのが前半。で、後半は一応それを受けて、コラージュ的に構成していく。俳優同士がそのお金(500円)を回していく中で、シーンを立ち上げたりとか、俳優の欲望などの諸条件があって、話が展開していくという感じですね。東京公演のバージョンは、YouTubeに映像がまるまる残っている。
高崎:川口くんから何か聞きたい事は?
川口:まず聞いておきたいのは、完全にガラパTシャツ!なんで着てるの?
(一同笑い)
(谷、なぜかガラパTシャツを着ている)
谷:(ガラパTシャツ)買っちゃった!(笑)
なんだかんだで、ガラパの公演を見たことなくて、先週観に行った。(今日、ここで、)ガラパゴスダイナモスの谷です!と言うためだけに着てきた。
橋本:しかも、Tシャツ2枚重ね!
(会場笑い)
高崎:谷さんのところはこういう芝居をやっている、と。
(集団:歩行訓練の映像)
谷:そうですね、個性的といえば個性的なんですか?
高崎:実際の芝居はもっと淡々としている感じだよね。
谷:要所要所でかなり(音なども)でかいけど、締めるは締めてる。
(普段から)演劇だけを作っているわけではない。 (この作品の場合は)最終的にパッケージングとして、演劇の作品であった方がいいな、と。
必然として喋るとか、(一見)意味ないものが重視されてきていたので、ガンガンずっと音鳴りっぱなしでずっと踊り狂っているというだけのものもある。
2.他地域公演をしようと思った経緯から、動員、広報について
高崎:今回は、他地域公演やっただけでは終わらないということで、最初ガラパさんの方に、先日のアゴラ公演をやったかと思うんですけど、それがどういった経緯で決まったのかとか、やってみてどうだったのかとか。あと、出来れば、動員とか予算とか差し支えない範囲でお話いただければ。
川口:あっ。僕らの時間。
(笑い)
川口:まず、(アゴラ公演が)決まった経緯は、そもそも公演自体は2010年冬のサミット、2月ですね。アゴラ劇場という東京の劇場があって、主催している演劇祭みたいなのがあって。いろんな地域から応募ができる。冬と夏とわかれてて、日本各地どこでも応募できる。採用されて行くことになった。一年前くらいに募集があって、僕らはそれに応募して、そこから決まって採用された。
橋本:なので、もともとアゴラ劇場でやると決めたのも、劇場に泊まれるとかそういった(環境も)すごくいいので。初めて福岡から東京に行くのにはすごくいい劇場だったなということで。
川口:(アゴラ劇場の)ハード面がすごくしっかりしている劇場なので。平田オリザさんの劇場。
劇場と、(平田オリザさん率いる青年団の)事務所、そして、宿泊できる場所がある。
なので、泊まれたりするので、宿泊費が抑えられるとか、わりとリアルな面で助かる。(あまり予算が無い中で)地方で(公演を)するにあたっては。
高崎:最初は、アゴラ劇場という、劇場がやっている公募の演劇祭企画に応募して、その審査に通ったというのが経緯ということですね。
だいたい東京では、何ステージ行った?
川口:東京では、5ステージ。一回の公演でのキャパが60〜90人くらい入る劇場。
行く時にどのくらい客席組んでいいのかわからなかった。
橋本:(東京に行くまで)全く分からない状態で。
川口:お客さんがどれくらい来るかわからないし、(お客さんは)僕らのことも知らないし。
結果的には、全ステージ完売になったんですけど…。
橋本:(全ステージ完売になったんですけど)大変でした。
久しぶりに、(アゴラ公演当時の)資料を見て、(本番の2日前に)小屋入りした時のお客様の予約の数が、全体の人数の3割くらいだった。すごく少なくて、(その数字を見ると)怯えます。(笑)
仕込みが2日、火(小屋入り)、水仕込んで、木曜の夜から公演で、日曜日までで全5ステ。
それで、火曜日の段階でチケットの売れ行きが、全体の人数の3割くらいで恐ろしい数字だったので…
(会場笑い)
橋本:ちょっとこれ、(劇団の)みんなに(現時点で3割ということを)言えないな、と集計しながら思っていた。なんて言おう…と思っていた。
高崎:それは、数字をリアルタイムで把握できていなかったとかではなく?
橋本:(数字をリアルタイムで把握できていなかったわけ)ではなくですね。 公演直前の予約がすごく多かった。
川口:そのへん(公演直前の予約が多かったというところ)がやっぱり福岡とは違う気がした。
福岡での公演では、わりと早い段階で全ステージ完売した。
橋本:お金では、通常のところよりもちょっとやれたというところなんですが、福岡とくらべて。
川口:うちはありがたいことに、福岡でやるとお客さんがわりかし入っていただけるので。
今回も、この時はツアーなので、アゴラ劇場に合わせたサイズで作品を作らないといけなくなる。
ホントはイムズホールだと、もうちょっと入る。例えば400くらいの劇場でやることもあるんですけど、その時はキャパが全体の福岡公演全体の動員数も少なかった。700くらいで。普段は1000ちょいなので。余裕があったということ。
谷:その数字でまた怯えますね。(笑)
(一同笑い)
高崎:5ステで60〜90ということで、300人〜400入ったとして。地方から東京に行った劇団としてはかなり破格な数字だなと思う。斎藤さんに聞きたいんだけど、(公演の)直前で全体の人数の3割とか4割とかで、その後にそんだけ伸びるって、一般論じゃない力が跳ね返っている気がするんですが、どうですかね。
斎藤:そうですね、東京はお客さんの総数が半端ない。僕が思うに「3倍の法則」というのがあって。
(一同:3倍の法則?)
斎藤:初日までの予約数が千秋楽になると3倍になる。
(一同:へ〜)
谷:それは期間を問わずですか?
斎藤:短期間の公演では難しいですが、1週間とか長い期間の公演になると、初日の1週間前くらいに事前予約が200人〜300人くらい入っていたら、千秋楽には総動員が1000人弱ぐらいになっていることがある。
橋本:へぇー!すごーい!
斎藤:東京だとありえる。
高崎:ガラパは、けっこうそれなりに前評判は良かったのかなと思う、300人くらいのお客さんが来るということは。でも、お客さんも、どうせチケット完売とかならないだろうくらいの感じで、買い控えといて、その週になって、バッと動員増えたかなという感じがしていて。他の劇団がふらっと(東京に)行って300とか400とか無いので。やはり、事前の ガラパの名前の売れ方や、それまでの東京の人とのネットワーク、そういうのがいいタイミングで、公演の動員につながったと。
斎藤:名前は知っているとか、見たいという潜在要素がないと、そこまでにはならない。潜在要素のない公演とかだと、そんな劇的な増え方はせず、ずるずるいってしまう。過去数回の評価が良ければ、事前にきちんと売れるので、東京だと。
川口:僕らは福岡でやってて、旗揚げから5年目、6年目の時に東京公演をした。その間(5年〜6年の間)、東京の演劇されてる方、制作者さん、作家さん、演出家さんに、知り合う機会がかなり多かったので、そこは劇団の中でも相当大きかった。そこのつながりとかに助けられた。 その時もアフタートークを全ステージやってるんですが、その時(アフタートークに出てもらったの)は、 MONOの代表の土田英生さん、ヨーロッパ企画の主宰の上田誠さん、andymoriのボーカルの小山田壮平さんなど、それなりに東京で知名度のある人達の力は頼って使いました。それは効果があったのかな?と思いました。
橋本:やったと思ったのが、福岡と東京では、宣伝の仕方がまるで違って。福岡だと、あんまりつかわないツールとかも、東京だと、それが一番使われているツールだというのがあった。幸いなことに、福岡公演が2ヶ月くらい前だから、東京公演の評判をサイトにつなげていくという、流れでつなげて持っていくというやり方をすることで、つながっていったのかなと思った。
あとひとつ、これは大きかったな、というのがある。10月ぐらいの段階で、事前に東京の雑誌社の方へ会いに行って、雑誌社とかを回った。それで、福岡公演が終わったタイミングとかで写真とかをお貸ししていた。そこから雑誌とかに載せて頂いたのが公演直前だった。そこもわりと大きかったなと思った。
川口:東京は、ネットが強いと思いますね。
(代表的なもので)CoRichがある。福岡だと動員に影響を及ぼしていないと思う。
東京だと、単純に(CoRichを)見てきたって人たちが相当数だから、多分(日頃)見てるんだろうなと。東京で観劇する人たちは。
谷:単純に生活の中の、メインサイクルにしているみたいな人かなりいるみたいだよ。
斎藤:どの劇場に行っても見かけるお客さんがいたりする。
(笑い)
高崎:かなり入念な広報計画みたいなものをしていた?
川口:相当準備やシュミレーションはしてましたね。
谷:ある程度、「こうなるだろう」というようなプランがあって、そのように展開できたの?
川口:そうですね。展開したにもかかわらず、(小屋入りの日に)全体の人数の3割とかだったんで。
谷:それはやばいですね。怯える感じですね。
橋本:(小屋入りの日に全体の人数の3割とかだったので)みんなの顔が暗くなっていって…
川口:地元だと多少手売りというか、役者が自分たちで売ることができるんですけど、東京だと、それがやっぱり、できないので、不可能なので。向こうのお客さんたちの中で動かしてもらうしか無い。事前にそれは分かっていたことなので。そこはあらかじめ照準を絞っていたというのは、結果的には成功したんだろうな、と思う。
高崎:広報計画、たとえばこういう計画を立てて…みたいなのはありますか?
橋本:ガラパゴスダイナモス知っていますか企画をやった。
名前が知られていて、演劇に限らず色んな活躍をしている人に“ガラパゴスダイナモス知っていますか”と聞いて、もらったものをどんどんサイトに上げていき、発信していくという企画があって。劇団員がそれぞれ企画を持ってきて、企画を上げていくんですが、わりとしっかりした3,4枚に渡る企画書だった。
どこまでやったかという記憶にないけど、やってた。
谷:具体的に何をしたの?
橋本:具体的にはコメントをもらったりして。“こんな劇団だよ”とか。“こんな感じだよ”というのを、自分たちからではなく、いろんな人からコメントしてもらう。
あとは、地味に東京の友達に手紙を書きましょう、と言って、劇団員みんなでやりましたね。お手紙作戦。
高崎:劇団として、初めての東京公演で、広報はほんとに頑張らないとだめだなぁっていう危機感のようなものはあった?
川口:ありましたね。それはほんとに。色んな劇団が東京に行ってるじゃないですか。福岡から東京公演に。それはなんとなく知っているんだけど、どこも苦戦しているという話は批評をぼんやり読んではいたんで。
やり過ぎるくらいやらないとダメージしか残らないな、東京公演をするのは、と思った。
金銭的リスクは相当ありますし。予算的なことで言っても、福岡だけでやるのとツアーでというのとは、やっぱり倍くらい違うので。
主催・協力等
主催:NPO法人FPAP
後援:福岡市、(公財)福岡市文化芸術振興財団、九州地域演劇協議会