ゲキトーク 北川大輔×鈴木アツト チャンスを生み出す○○力

日時
2014年1月19日(日) 18:30〜20:00
会場
cafe Teco(福岡市中央区)
パネリスト
北川大輔(カムヰヤッセン)、鈴木アツト(劇団印象 -indian elephant-)
進行
高崎大志(NPO法人FPAP)
  

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チャンスを生み出すアピール力

 

顔と特徴を覚えてもらえるキャッチフレーズを作る

高崎:演劇祭や劇場の関係者に対するアピールついて、鈴木さんからお話がありましたが、北川さんは劇場職員として逆にそういうアピールを受けることもありますよね。どういう点に気を付けたり注目していますか。

北川:自分がアピールするときと、されるときは一緒だと思うのですが、最初は印象に残る、審査員に覚えてもらうことですね。喧嘩の話もありましたが。

高崎:北川さんに喰ってかかられたら怖いでしょうね(笑)。


北川:喰ってかかることはないですよ!僕は逆に喧嘩が上手ではないのでボコボコにするまでやってしまって、あまり良い結果を生まない(笑)。口喧嘩もダメな結果を招いてしまう。なので、平和にプレゼンしに行きます。王子小劇場はいろんな劇団がきて、使いたいと言ってくださるのですが、一番印象に残っているのは、芝居の一部をプレゼンでされたとき。王子小劇場でやりたいというミュージカルを4畳半の事務所でされたときは、笑うしかなかった。

高崎:4畳半でミュージカル!?

北川:本当に6人くらいでビチビチになって今から歌い踊りますと言われたときは(笑)。それに対する好き嫌いはあるにしても印象には残ります。プレゼンでミュージカルやった人だ!って。

鈴木:どれくらいの長さやっていたの?

北川:10分位やっていました。最初はえっ!?てなったけど、途中から見ている職員側とも一体になった感じすらあった。折れずに頑張っている!って(笑)。それは一番ラディカルな例ですが、先ほどの劇団のキャッチコピーでもどんなことをやっているか、なるべく短く、キャッチーに覚えてもらうにはどうすればいいか、というのを考えました。多くの劇団がものすごく特徴があるというわけではない中で、すぐ覚えてもらえて、劇団の特徴が一致するキャッチーフレーズを仕込んで持っていきます。ミュージカルもそれの一つだと思う。

他の地域の演劇関係者に会いに行く

高崎:北川さんご自身も劇場の方に挨拶に行くことはあるのですか?

北川:あります。僕が福岡に最初に伺ったのは2011年。震災の影響で仕事が飛んだ時、せっかくだから劇団のために他の地域を見たいと思って大阪や福岡に挨拶回りにいった。そのときにご挨拶をしてDVDもお渡ししました。九州だとFPAPさんにも。

高崎:私はそのとき会えなかったのですが、来たというのは聞いていました。来月、北川さんの劇団とFPAPで共催公演をするけど、その訪問がなければ全然知らない劇団のままだったので、共催公演は出来なかったかもしれない。


北川:逆に、自分も劇場の人として言うと、うちの劇場でやらないにしても会いに来てください。この前、福岡の万能グローブガラパゴスダイナモスさんがアゴラで公演をされる前に王子小劇場に来てくれて、お話をしました。すると、職員が公演を観に行くんですよ。今回王子小劇場を使わなくても、いつかプレゼンをする時に「あの劇団だな」というのがすぐにわかる。

鈴木:ガラパゴスダイナモスさんは挨拶のためだけに東京に来てたの?

高崎:東京公演があったのでおそらくその宣伝でいくつかの劇場に挨拶に行かれたんじゃないかな。囲碁でいう、石を置いとくというような、伏線を置くことは大切ですね。

北川:どうしても宣伝のためだけに行くと、お金かかるので、う!ってなると思うんですけど、エビでタイを釣るという効果はあると思います。しかもわざわざ福岡から来てくださると余計に。

高崎:私もそうですが、公演を見に来てと言われると見に行きたくなりますもんね。


応募できる賞のリストをつくる

鈴木:賞に関しては、毎年、もしくは2年に1度はあることがわかっているので、リストを作っています。1月から12月までで応募できる賞のリストから、賞の方向性にあう作品がたまたま手元にある場合は、応募する。戯曲賞なら短編のものもあるので、ちょうど良いものがあれば出すし、なければ出さない。

北川:劇作をやっていると、決まっている公演をすることでいっぱいいっぱいになってしまう。この作品のために書く、というように戯曲賞のために書くこともあるのですか?

鈴木:と言うより、最近は劇場を予約しないようにしている。自分で劇場を予約するとお金がかかるので、できるだけコンペや、提携企画に応募して公演をしている。

チャンスを生み出すコネクション力

高崎:どうアピールしていくかというテーマに割と近いのですが、どうネットワークを広げていくか、コネクションを作っていく力も必要だと思います。アピールを瞬間的に届けることだとすれば、コネクションやネットワークは、その作品を継続してアピールしやすい場所を確保していくということかなと思うのですが、そのあたりで心がけていることはありますか。

鈴木:交流会でむやみに名刺を渡すだけでは効果がない。心掛けているのは作品の方向性や芸術的な感性が合うかを見極めて仲良くなるのが大事だなと思いますね。

北川:僕は逆です。田中角栄が「選挙の票数は握手した人の数だ」と言ったことがあって。僕は交流会に行くと全員と喋りたいと思うし、僕や劇団員にまずは興味を持ってもらいたい。恥ずかしいことを言うけど、僕たちに興味を持ってファンになってもらいたい。次に芝居を見に来てもらいたい。それがおもしろかったら、そこから広がっていく。

    実際、昨日の公演も夜公演が4名の予約しかなかった。昼は20名くらい動員して、当日の15時の段階で19時の公演は予約が4名しかなくてやばい、となった。内部では夜公演やれる!?って心配していたけど、昼の回を見に来てくれたお客さんに、夜公演がやばいので広げてくれると嬉しいですと伝えると、Twitterで口コミを広げてくれて、23人来てもらえた。本当にありがたかった。最終的に、握手した人数のようなものに帰着すると思っている。

高崎:人によってアプローチのやり方はあると思いますが、自分の技を持っているというのは重要ですね。

鈴木:僕は今、永井愛さんと親しくしているが、永井さんに会う機会を持てた時に永井さんの戯曲だけでなくエッセイも読んで行った。エッセイまで読む人は少ないかなと思ってエッセイのこういうところがよかったと言ったら、関心を持ってもらえた。僕の場合は、ピンポイントに自分と合う人とどれどけ濃く、仲良くなれるかをコネクションでは重要視している。

 

キーパーソンとつながる

北川:例えば劇場の企画やセレクションに誘われたい、劇場を無料で使いたいという時は、キーパーソンとなる人に直接つながるのは難しい。ラスボス的な存在なので、それが誰か分かるように作戦を立てる。他の地域にいったら、現地の制作者さんと仲良くするし、まずその人に作品を好きになってほしい。大阪なら○○さん、東京なら××さんや、エンタメ系の芝居ならこの人、アート系の芝居ならこの人といった人とコネクションを持つための準備をする。その上で、セレクションを選んでいるラスボス的な人に見てもらえる状態にする。

鈴木:すぐにはわからなくても、ちょっと調べればわかるキーパーソンはいる。王子小劇場なら北川さんにアピールすればいいのか、とか。印象は今年、芸術文化振興基金の助成金がとれたのだけど、助成金が決まるプロセスは意外とみんな知らない。応募書類を見て選定しているのは役人ではなく、演劇の選定委員がいる。応募書類には、皆よいことを書いている中で、最終的に決め手となるのは、その劇団の作品を見ているかどうか。演劇の専門委員はHPに載っている。その委員に招待状を出して、作品を見てもらっていると違うと思う。

高崎:審査員の公開は審査が終了後ですが、何年かごとに回しているみたいですね。過去の名前を見ると、劇作家の方や協会の演出家の方々が多いので、招待状を出し続けていると変わるでしょうね。

    北川さんも今回の公演は、芸術文化振興基金の助成金を受けていますよね。東京の劇団で、北川さんくらいの年齢やカンパニーの規模で、芸文の助成金をとれるケースは少ないですよね。

北川:僕もそう思っていました。名前を憶えてもらうことと練習を兼ねて4年間だし続けていました。多分、僕も昨年、シアタートラムのネクスト・ジェネレーションという劇場の主催事業に選出してもらったのですが、それを見てもらったり、劇評が雑誌に載ったりした影響がある気がします。

高崎:東京の場合はシアタートラムでの公演が劇団のステップになっているんですね。

北川:その可能性はあると思います。シアタートラムで公演ができるというのは、作品の質がある程度あるという担保にもなっていると思うので、芸術文化振興基金の人も見ていると思います。


   カムヰヤッセン 『やわらかいヒビ』
   (シアタートラム ネクスト・ジェネレーション)

高崎:東京以外の地域だと賞を取っていない限りは、地域の劇団の作品を審査員が見に来ることはまずないですね。賞を取っているか、社会的意義があるなど、よっぽどうまく企画を作らないと。それと、学校で公演をするようなプロの劇団が海外公演や、地元の人たちとの企画でとっている場合はあります。東京以外だと、そういう傾向があるのではないかな。

北川:では、賞などのデータベースで選出ですか?

高崎:新人戯曲賞を獲っている九州の劇団や、地域の戯曲賞を獲っているところは強いです。九州では飛ぶ劇場、こふく劇場は芸文助成の常連で、やはり賞を獲っています。それ以外で、若手の劇団が食い込もうとするとかなり大変です。福岡ではガラパゴスダイナモスさんくらい活動をPRしていればいけるかもしれない。審査員の耳にも入っていそう。

北川:市の助成金はどうですか?

高崎:ローカル限定の助成金であればもっとハードルは下がりますね。

北川:それは、逆に羨ましいですね。東京は劇団の数が多いので、芸文の担当の人に名前が聞こえるまで、とても時間がかかった。地域の助成金に応募しようとすると、その地域に活動拠点のある団体が対象となっていることが多くて応募できない。大阪公演は大阪市が会場となっていれば申請できたので、そういうことへのアンテナは常に張っています。

 

企画書を書くことで、自分の作品が見えてくる

鈴木:さっき4年間だしたとおっしゃっていましたけど、まず、出すのが第一だと思います。僕は企画書を全部自分で書いているのですが、自分が何をやりたいのか文章にすることによって、整理できるのが良かった。作、演出的にもいい。お金の計算は面倒だけど、企画書を書くのは作・演出家にとって大事だと思う。北川さんは自分で企画書を書いていますか?

北川:書いていますね。最近は劇団員にたたき台を作ってもらって、それを加筆修正して、自分はこういうのを作りたいんだ!て思うことがよくあります。

高崎:出し続けるのが大切というのは、本当にそうですね。一回だしてダメだったら、やめてしまう人も結構いると思うので。

北川:ぶっちゃけ、面倒くさいですよね(笑)芸文の書類は、面倒くさい!ただ、それを楽しんでやることではないでしょうか。

鈴木:最初の1,2回は面倒ですが、予算は使い回しできません?慣れてくると苦にならなくなる。

北川:僕はそんなことないですね。地方公演が絡んでいるので、使いまわしできるのは団体概要くらいで、予算は手探りで一から作らなくてはいけない。

鈴木:アーツカウンシル東京の助成金も内容は大体同じです。芸文を出すと他にも使いまわせる。

高崎:福岡も、福岡市文化芸術財団の助成金と芸文の助成金の申請は似ているところもあります、芸文はなかなかとれないかもしれないけど、芸文に申請したのであれば財団にも出しておけばアピールにはなるでしょう。

 

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