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日時
2011/5/15(日) 13:00-19:00
会場
ぽんプラザホール
講師
杉山至(青年団)

W/S2.空間のスケッチの続き

昨日の続きで、チーム名、メンバー、タイトル、コンセプトをいれた、スケッチのイメージを作品にして、 それぞれのチームで発表をしました。

一晩置いたせいか、イメージが整理されてるチームもあれば、イメージを練りすぎて、直感的に伝わりにくくなってしまっているチームも。

杉山さんからは
「イメージを言語化したりしていくうちに、ずれることもある。」
「説明のプレゼンの最中に動作をおこなうことで多重構造になっている、同時に起こっているのがおもしろい。」
「先に説明なく見せて『あれ?タイトルや名前がない』と思わせるなど、枠組みをうまくつかっている。
お客さんをどの程度能動的にさせるか、そのレベルの違いが演劇のむずかしいところ。それを考えさせられた。」
「単純なのがいい。やわらかい紙という素材を生かしている。
紙はいろいろやりだすとできちゃうけど、子供のころにやっていたようなテクニックでやってみるというのもいい。」
「コンセプトを練って、イメージに近づけようとしてしまった。そうすると、素材が負けてしまうことも。
実際に舞台美術を作るときも、イメージに近い素材・テクスチャを使えるようにしたほうがいい。」
というコメントがありました。




レクチャー:他中心の発想(日本的)VS遠近法(一点への収束・西洋的)の世界

間接的に舞台美術と関係あるというものについて見ながら、 面でつくることと線でつくることの違いについての話。
日本画・神社等建築などを見ると、日本は古来、線で空間をわけてきたそうです。
しかし、今の多くの舞台芸術について、劇場・プロセミアムの中の舞台空間の作り方は面(洋風)でおこなっていることが多いそうです。

同じ場所を描いた日本画と西洋画について、描き方の違いから、 日本と西洋の空間認識や視点の違いについてのお話も。
それぞれの違いは、日本の芸能空間の特性「道行」とヨーロッパの「広場」という違いによるものから生まれているようです。
日本画はレイヤーを重ねて空間を奥行きを表現しており、遠近法ではない重ね方であることが多いとのこと。中心軸をずらして、視線の動きをつくり、間をうんでいる。
西洋画は、見ている個人の視点から広がる世界で、一点に集約されている、とのこと。

他にも、大名行列や花魁道中からも見えるように、日本の芸能では道行が重視されており、 舞台でとまって演技することより、ねりあるくことが日本の芸能の本質。とのこと。
境界性の芸術、という表現をされていました。
たしかに、歌舞伎も舞台以上に花道が見せ場となっています。

水平方向の空間表現と垂直性と奥行きの空間表現の違いとして、 歌舞伎などの絵巻物的な昔の日本の舞台空間表現と、縦に長く、奥行きがある、西洋の舞台の比率に近い今の日本の舞台空間表現についてのお話もありました。
昔のヨーロッパでは、美術家が劇場を建築していたそうです!

他にも、ヨーロッパの悲劇(王者に属するもの)・喜劇(私人の邸宅)・風刺劇(風景・東屋)といった、舞台美術の記号的表現についてや、舞台美術の資料や絵巻物でいろいろな舞台美術についての考え方の話があり、舞台を見る視点について、今度から新しい視点で見れそうだな、と思いました。









原風景のW/S

<個人ワーク>

ふとしたときに昔の記憶がフラッシュバックし、情景が思い浮かぶことがある。
子供のころの五感による記憶。そんな風景があると思う。それを描いてみてください。
ということで、個人でスケッチ。

<グループワーク>
スケッチしたら、また対話して、似ている人同士で集まってチームに。
チーム名を決めて発表しました。

景色を描いている人もいれば、そのとき見えていた自分の視点から書いていた人も。
周りの人との関係の記憶で印象に残っている場面の人もいました。

<原風景を模型に>

原風景というのは記憶。
3次元の現実の記憶を、一度スケッチにして記憶としてかきおこした。
3次元の記憶→2次元のスケッチ→3次元の模型
すると、ちょっとしたずれがでてくる。
そこを見てみましょう、ということで、自分のスケッチをもとに、それぞれ模型を作りました。

模型をつくるときには、ジオラマではなく、自分の視覚・自分の見た再現として模型をつくることを心がけました。

白模型という、スチレンボードとケント紙を使った、色のついていない模型を作りました。
「白模型は光・影がきれい。その要素も使ってみて。」と杉山さん。

模型作成に各参加者の作成する模型を見ながら、杉山さんが
「遠近感を意識して。」
「日本は湿度が高いので、かすみがかって景色がぺらんとして見えることも。
なので、層をいくつか重ねるという手法があるのかも。」
「ある程度できたら、エッジを見てほしい。紙の形・印象が残ってしまっているかもしれない」
「人は、エッジを探してしまう。その境界線をどう作るか」
「重要なのは、精巧なミニチュア模型を作ることではなく、印象を伝えること」
「光と影の回り方・空間とは何かを考えるとおもしろい」
「平面だと印象がないが、筋をつけたり、光の回る道を作ると印象がかわってくる」
「スケール感は大事。何か具体的な物が一つあると、どれくらいのスケールなのかがわかる」
と言っていたのが印象に残りました。

できあがった模型について、どんなイメージで作ったのかを発表。
そのまま舞台美術プランとして使えそうなものもあれば、 スケッチのイメージの要素をうまく抜き出しているのもあり、 「あのスケッチが立体になるとこうなるのか!」と、おもしろく見ました。

2日間、全部で10時間という長時間のワークショップでしたが、 それぞれの話題についてもっと深く話したい!聞きたい!と思うような、 密なワークショップになりました。
参加者がそれぞれに持ち帰り、どんな形で今後の活動にいかしてくれるかが楽しみです。












>>5/14のレポート

主催・協力等

主催:NPO法人FPAP
協力:九州地域演劇協議会
後援:(財)福岡市文化芸術振興財団、福岡市
助成:(財)福岡市文化芸術振興財団


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