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日時
2011/5/14(土) 14:00-18:00
会場
ぽんプラザホール
講師
杉山至(青年団)

はじめに

今回のワークショップは、ある程度の経験を持った演出家・舞台美術他スタッフを対象として参加者を募集しました。
ワークショップの内容としては、初心者にむけても経験者にむけても共通の内容で行っているそうです。
どういう立場の方が受けても、何かしらの発見がある、とのこと。
今回は、その内容に加えて、舞台美術についてのレクチャーもお願いしていました。
講師の杉山さんより、舞台美術についてのレクチャーからワークショップが開始。
杉山さんは、27歳くらいから舞台美術について勉強を始めたそうです。
常々、「舞台美術の本が無い」と感じているそうですが、当時、勉強したい!と思っても、学びたいことが載っている本がなく、 舞台美術について専門的に学べる大学もなくて、近いものとして建築を学んだそうです。
どこから舞台美術が始まるのか。ということについても調べてみたとのこと。
舞台美術について系統をたどっていくと、彫刻や建築の中に要素が入っているのが見えてきたそうです。
また、面であらわす西洋的な発想と線であらわす日本的な発想による舞台美術の違いも見えてくる、とのこと。

続いて、杉山さんが、今までてがけた舞台美術についての写真を見ながら、それぞれについてお話が。
杉山さんがデザインした舞台美術のほとんどは、六尺堂という工房で、自分達で道具を作成しているそうです。規模によっては大道具会社に発注して作ることも。

青年団の公演では小物を多く使い、リアルだけど抽象的で溶けていく、という感じの舞台美術にすることが多いそうです。
黒幕・黒パネルを極力使わないようにしている、とのこと。また、青年団の海外公演では荷物の運搬に船便を使わないそうです。飛行機で手運びするとのこと。
「東京ノート」ルーマニア公演では、大きいものは現地で作成。あとは持ち込みだったそうです。
単純なつくりで空間を区切ったり、最低限の要素で空間をうめるようにしている、とのこと。

ロボット演劇の舞台美術の時は、ロボットの動作のために床の高さを1mm単位であわせる必要があり、大変だったそうです。微妙な高さについては、新聞紙で高さをそろえた、とのこと。

<ワークショップ>についても少しお話が。
杉山さんが<ワークショップ。というものを初めて受けたのは1998年、ロンドンの建築学校の先生のワークショップだったそうです。とても刺激的なワークショップだったそうで、自身でワークショップを行う際も

いろいろなことを発見させる。
発見するやり方を学ぶ。
レクチャー(聞く・見る)

など、技術講習とは違う、身体・五感を使って発見することができるものを、と心がけているそうです。
「身体知」という表現をされていました。









W/S 中心を探す

<個人ワーク>

まず、参加者それぞれにA4用紙を1枚ずつ配布しました。
文字が書ける・裏と表がある・曲がる・折れる・切れるという、「紙」という媒体(メディア)を使って、
「中心」というイメージを形にしました。

・A4の紙に中心を探す(何を中心とするか、を考える)
・紙に自分がいるとしたら、どこにいるか

について、考えてもらい、各々の「中心」を作ってもらいました。

<グループワーク>

それぞれの「中心」ができあがったら、他の参加者とお互いの作ったものについて話し、
似ている!と思う人同士でグループを作り、チーム名を決めました。

グループ分け・チーム名ができたら、それぞれのチームに、
メンバーの自己紹介・それぞれの「中心」についての説明・何をもって「似ている」としたか、について話してもらいました。
それぞれについて、杉山さんからも丁寧にコメントがつけられ、イメージがさらにふくらんでいきました。

杉山さんより、このワークショップの目的として、以下のようにお話が。
「<中心>というテーマをだした。が、ふだん舞台美術プランを立てるときは、テーマは自分で探すもので、 その時々によって変わる。そのイメージを具体的に形にする。物があって、絵を描いたり折ったり形にして
イメージを捕まえなおす・変質するということが舞台美術らしいと思う。
もう一つは対話してほしいということ。相手が違うことを考えているときに、共通点・違いを生かしておもしろ
いものをつくれる。自分だけのわがままでもいけないし、流されすぎても。そのバランスの中で作っていく。
舞台美術プランを作っていく中では、こういう対話の作業をいろんな局面でしている。」

対話、ということについて、対話(ダイアローグ)と会話(カンバセーション)の違いについても話がありました。
「日本では生活の中にダイアローグがない。休憩中の話みたいなのは会話にあたる。禅問答やギリシャ哲学は対話。」
初めてフランス人と仕事したとき、杉山さんにとっては喧嘩と思えるような会話が、実は対話にあたるもので、すごくカルチャーショックを感じたそうです。
杉山さんは文化庁芸術家在外研修員としてイタリア・ナポリの舞台美術工房で研修を受けたそうですが、
イタリアは仕事・つくったものを見て対話していて、同じヨーロッパでも土地によって性質の違いがあったとのこと。









W/S 空間のスケッチ

「空間は何か?」ということをスケッチしながら考えるワークを行いました。
スケッチに入る前に簡単に舞台美術と空間についてのお話が。
舞台美術は、役者等の背後をかざる仕事ととらえられ、少し前までは舞台装置(セットデザイン)と呼ばれていた。
杉山さんとしては、飾る・装飾するということが舞台美術なのではなく、一緒に空間のイメージを作り出している仕事だ、と思っている。
シーンのグラフを作る、情景の図・形を作るという意味で、「セノグラフィー」という言葉が定着していくといい、と考えているそうです。

舞台美術にかかわらず、さまざまな装置(階段や窓)によって空間は作られています。
たとえば、平面に階段がでると、視点の位置が変わり、物理的な高さで社会的な高さを表現することもできます。
イスも同じように、ちょっとした視点の高さの違いを作ることができる装置です。
扉も手前と向こうの空間をくぎることができます。杉山さんは、稼動する扉・透けている扉をよく使うそうです。
また、視点についても。舞台には<見る-見られる>の関係がある。
どこから見られるのか、観客からの視点でも空間が変わってくる。という話がありました。

<個人ワーク>

感覚的に気になる空間を発見し、スケッチを描いてもらいました。

スケッチを描いてみる中で、杉山さんが
「舞台美術興味ある方は、ぜひスケッチブック(線が入っていないもの)を持つといいと思う。
絵を描いたり言葉を書いたり。自分のイメージを読み返すことができる。
文章と同じように、絵も言語の一つ。」
とお話されていたのが印象的でした。

<グループワーク>

スケッチを描きあげたら、先ほどと同じように他の人と対話し、自分と似たスケッチを探しました。
何が気になった・どんな視点で似ているかを考えながら集まって話し、チーム名を考えました。

対話のコツがつかめてきたのか、みんな活発に対話し、お互いのスケッチのイメージについて話をしていました。
グループができたら、チーム名を考え、各チームごとに集まった視点・それぞれのスケッチのイメージについて発表しました。

ぽんプラザホールの建物の特徴として、梁がななめにはしっている、というのがあるそうです。
吊り物ができるために天井の梁が複雑に交差している、ということが見上げた視点で、斜めの交差について描いているグループのスケッチからわかりました。

それぞれのスケッチについてのコメントの中では、
「舞台美術でも、アイレベル(人の目の高さ)に印象的なものを持ってきたり、あえて人型をいれてみたりする。」
「吊り物は途中で切れた梁など、日常ではないものを作ることができる。
下から立ち上げるだけではなく、上から吊るという視点もおもしろい」
「遠近感を意識したり、近くから描いたりと、同じものを見ていても視点で印象が変わる。」
「光から遠いところが闇のように思えるが、実は光に一番近いところが、人間には一番暗く見える。」
ということが印象に残りました。

<イメージを共有して形に>

ワークショップの残り時間を使って、スケッチのイメージを、チーム名・メンバーの名前・作品のタイトルをどこかにいれて、各チームそれぞれ1枚の模造紙で形にしていく、という作業をしました。
「イメージをキーワードにしていくと、共通のものを探しやすい。」というヒントも。
完成させるのは翌日のワークショップのはじめの時間で、ということで、みなさんイメージの共有をしていました。

みっちりと頭と身体を動かして、空間とは何か?自分がどういう視点で空間を見ているのか?ということについて
考え・対話した4時間でした。















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主催・協力等

主催:NPO法人FPAP
協力:九州地域演劇協議会
後援:(財)福岡市文化芸術振興財団、福岡市
助成:(財)福岡市文化芸術振興財団


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