まず最初に、集まった人から宿題にだされた「起・承・転・結」の区分けを、ホワイトボードに書いていきました。
みなさんだいたい同じような分け方になるのかなと思っていましたが、場面の状況・登場人物たちの心情・舞台装置の動きなど、どこを基準に考えて場面を分けるかで、どこを起承転結として見るかが違っていたようで、けっこう意見が分かれていました。
それぞれ、なぜそういう分け方を質問するなどして宿題の発表。最後に、泊さんならどう分けるかの説明がありました。
続いてレクチャー3。起承転結の考え方についてのお話でした。
起承転結が4等分されていると、お客様が作品を観ていて心地よいと感じるとのこと。
映画の上映時間とストーリーの起承転結の展開のしかたを例に作品の始まりから終わりまで、どのタイミングで展開していくと観ている側が飽きないのかという話。
映画によっては、転が2回起きるものもあり、そういった作品は先の読めない展開で飽きさせないようにしているらしいということでした。
泊さんの戯曲の書き方も紹介。
泊さんは、起承転結をそれぞれの中でさらに3ブロックに分けて、12章にして書いているそうです。
実際に泊さんの戯曲を使って、どこを起承転結にしているか、の解説をしてくださいました。
おおむね起承転結が4等分に近いページ数で、さらにそれぞれの中で分けられた3ブロックでも起承転がおこなわれていました。ページ数だけではなく、上演時間での考え方も紹介。飛ぶ劇場では台詞を喋るペースが速いようで、プロデュース公演で提供する作品よりも、飛ぶ劇場でおこなう作品の方が、1ページあたりにかかる時間が少ないとのこと。 「以前は、だらだらと書いていたが、こういう法則・メリハリをみつけて今は書いている。」ということでした。
次に民話を使って劇構造を考える。
まず、「鶴の恩返し」の物語を、以下のように構造にわけてみました。
(1) ツルを助ける
(2) 娘がやってくる
(3) 一緒に住む
(4) 娘が機をおる。高値で売れる
(5) 娘は「見ないでください」と言う。娘やつれる。
(6) 娘は元気ないが「もう一反織る」という
(7) 約束をやぶって機をおるところを見てしまう。
(8) 娘はツルだった。→ツル飛び去る
この中で、いったいどこが“ぐっとくる”のかを参加者のみなさんに聞いてみると、
やはり(6)〜(8)を選ぶ人が多かったです。理由としては
・やつれているのに娘は機ををおろうとするのでハラハラ
・機をおっている様子を見るのか見ないのかという葛藤
・娘がツルだった!
というものがあげられました。「鶴の恩返し」をもとにつくられた戯曲として『夕鶴』がありますが、『夕鶴』に描かれているのは(6)〜(8)の部分です。このことに対して泊さんは「『夕鶴』は『鶴の恩返し』の中の“ぐっとくる”ところを抽出して、現代社会の貨幣主義への批判の構図を盛り込んで劇化している。民話をもとに現代劇になったものは「鶴の恩返し」くらい。なぜかというと、民話の物語は通常、「悪いことすると→退治」、「いいことすると→いいことがある」、と勧善懲悪・教訓めいた感じで書かれているが、「鶴の恩返し」には人の葛藤がえがかれているから。」とおっしゃっていました。
そこで実際に戯曲を書いてみる3。 実際に、好きな民話を選んで、自分で「葛藤」のポイントを見つけてその葛藤の様子を戯曲に書いてみました。
書き上げたら、また他の参加者に読んでもらって発表。
終わったあとにおもわず拍手がでるような作品もありました。
みなさんそれぞれに見つけた「葛藤」のポイントがあり、ひとつの民話からこんなにいっぱいの種類の戯曲ができるのか!とびっくりしました。
特に「桃太郎」を題材にしたものは様々な場面で様々な登場人物が欲にまみれた葛藤をしていました。「桃太郎」の読み方が変わりそうです。
発表後は戯曲を書くための基本中の基本、定番中の定番を伝授。 そして、泊さんがだいたい本番のどれくらい前から戯曲を書いているか、稽古初日までにどれくらいできあがっているかなどのお話がありました。
ここまでが「戯曲を書くための準備の段階」ということで、ここから先、戯曲講座の3回目以降でやっている内容についても簡単に紹介。
2日間、同じテーマからいろいろな戯曲ができあがっていくのを、おもしろい!!と思いながら見ていました。泊さんが、ご自分の持っている手法をあますところなく見せてくれたので、参加者のみなさんも思う存分に書いてみることができたのじゃないかと思います。これから、初めての1作目を書いてみてほしいなと思いました。
レポート:三坂
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