第二部レポート
第2部では、飛ぶ劇場の泊篤志氏をコーディネーターに、九州各県の演劇状況と、パネリストである表現者がなぜ演劇をはじめそして今まで続けてきたのか、という2本柱でトークをおこないました。
<各県の演劇状況>
河野(ゼロソー)熊本:劇団数は20団体くらい。演劇人協議会に加盟している団体で17団体。それ以外にも参加していない劇団、個人もいます。よく利用する劇場は熊本市男女共同参画センターにある「はあもにい」、熊本市現代美術館にある「アートロフト」など熊本市の公共ホールで公演をすることが多いです。どの団体も大体年に1〜3回の公演頻度で活動しています。活動は熊本市内が多いですが、八代や山鹿で活動している団体もあります。
あべ(劇団こふく劇場)宮崎:宮崎県演劇協会は加盟団体数が約20団体。1部でもお話しがあったように、2007年から宮崎演劇祭が始まって、そこに劇団の活動が集中してしまうようになったという現状があります。今は年1回の公演とか。演劇祭がなかったら公演しないんじゃないか、という気もします。今は市内より市外の劇団が元気です。特に延岡市が精力的です。市街から離れた山間でやっていたりする団体もあります。主に使われている劇場は芸術劇場や自分たちで構えたアトリエで活動したりする団体もあります。宮崎市に新しく、アートセンターができました。演劇向きではないけれどそこで上演を試みたりもしています。今みんな活動の場所を探している状況です。
小島(座”K2T3)福岡:劇団数は100くらいじゃないかな。年1以上活動している団体は40〜50団体くらいだと思います。最近、合同公演やプロデュース公演が特に多いような気がします。劇場は、ぽんプラザホールが一番使われています。安くて使いやすいが、利用率が高いのでなかなか予約するのが大変という現状もあります。100席以下の劇場もあり、地元の劇団の公演で使われています。カフェなどでの公演やお客さん参加型など、昔はなかったような公演も出てきました。練習場も市の練習場などがいっぱいあり充実しています。
岩崎(ニセマサムネ)佐賀:佐賀で活動しているのは10団体くらい。キッズミュージカルも3団体くらいあります。佐賀演劇連盟がありましたが、これまで名前だけで、実態がありませんでした。この秋初めて演劇連盟のプロジェクトでプロデュース公演をしました。練習場は充実しています。どこの公民館もほとんど無料で使えます。地域に住んでいる人しか使えないみたいな縛りはほとんどないですね。稽古場もある、安く借りられる劇場もある、ただ頭数が少ない、という現状です。
泊(飛ぶ劇場)北九州:北九州は劇団が20団体くらい。その中で定期的に活動しているのは10団体くらい。劇場は、大中小のホールがある北九州芸術劇場があります。地元劇団が使うのは小ホール。前、住友銀行が持っていた、スミックスホールがなくなってしまい、しばらく劇団の活動場所を求めて放浪していたが、最近、枝光のアイアンシアターが面白いんじゃないの、という感じになっています。
福薗(劇団LOKE)鹿児島:鹿児島の現状は、小劇場系10団体、活動休止5団体、大学演劇1団体、地元で活躍している市民劇団3団体。劇場は1000以上キャパのある劇場ふくめざっと10以上。頻繁に活動しているのは鹿児島市を拠点にしている20〜30代の年代の劇団です。市内の劇場、公民館の講堂などで公演しています。
高椋(Officeせんせいしょん):おおいた演劇の会は所属が8団体。高文連、大学演劇部も入っています。そのほかにも各地域に劇団があります。高齢者劇団も盛んで各公民館に劇団があります。高校演劇も盛んになってきて、大学演劇も盛り返してきたな、という感じがある。我々も負けてられないなぁ、という感じです。
劇場は、大分市のホールや、NHKのスタジオホールがありますががちょっと使いにくい。
小さい劇場になると、個人でやっているライブハウスのような劇場などで公演することもあります。
1部でも話があったように、新しく複合施設ができるので希望が持てます。ライブハウスで200名くらいの演劇公演ができるような小屋ができるという噂もあり、ハードは整いつつあるなという感じです。
福田(F's Company)長崎:長崎市で年1回以上コンスタントに活動している団体は3団体くらい。2年に1回とか、3年に1回とかでやっている劇団はもう少しあります。あとは市民劇や、長崎市主催の公演に出ている人や大衆演劇。お隣の諌早市にも3団体くらい。佐世保も3団体くらい。対馬にも昔劇団がありましたが、今活動しているかどうかはわからないですね。島の方の活動はいろんな島があるので把握しづらいですね(笑)
長崎の特徴は、劇場、市などの主催で100人規模の市民劇が多いことです。県が演劇県長崎というのをうたって、プロの劇作家、俳優を養成する長崎座というものも3年前に発足しましたが、俳優講座と戯曲講座があって俳優講座は年13回!もうすぐなくなるんじゃないかな・・・。
長崎はいろんなところで地域を軸に活動して、他地域に活動な幅を広げ始めている劇団が増えているよう状況です。
稽古場は不足しています。自分たちで稽古場を借りているところもあります。その稽古場を使って公演をすることもあります。
<なぜ演劇を始め、続けてきたのか>
河野:高校の時に、初めて戯曲を読んで、しゃべる人の名前が書いてあり、しゃべる言葉が書いてある、こんなのあるんだ、と思いました。なんかすごいな、と思って、大学でなんとなく演劇部に入って始め、そのまま続けています。最初に読んだのは野田秀樹さんのの本でした。
あべ:なにがおもしろくて演劇やってるんですか?
河野:最初は俳優志望でした。今は劇作して演出するのが面白い。今は劇団の代表になったので。やめるわけにはいかない、と思っています。一緒に続けていく仲間がいるし、熊本で芝居を続けていく使命感みたいなものもあります。
あべ:最近私はそれがわからなくなってきて(笑)。前は単純に人前で話すのが面白くてやっていたけど、最近は武士、とか侍的な精神みたいになってきた
〜会場、笑い〜
あべ:うまく言えないんですけど…、例えば、なんか誰かに話しかけられて、そしたらなんか“うわ〜”って出るでしょ?それって何なんだろう?って思うんですよ(笑)。それを突き詰めてみたいな、って思っています。今は、人に見てもらうこと、が楽しいんじゃなくて、何だろうと思ったことを突き詰めていくこと、自分の中を知ることが楽しい。
河野:修行みたい。
あべ:そう!演劇という手法を使って悟りを開きたいのかもしれない(笑)。
小島:私の演劇との出会いは、ダンスが先だったような気がします。ダンスとかで舞台に立っていて、歌と踊りがくっついた。ミュージカルに出会った。座”K2T3を旗揚げする時のきっかけもミュージカルだったんです。2回公演まで歌って踊っていました(笑)。
それは無理だと思ってやめました。
〜会場、笑い〜
小島:自分たちがうまくなりたい、もと面白いものを創りたいという想いで続けてきました。今は逆に、、今やめたらどうなるんだろう、という恐怖が大きくてやめられないですね。
泊:前の代表の後藤さんがやめたじゃないですか。それでも劇団が続いたのがすごいな。
小島:そこでやめるきっかけはあったんだと思います。でも、まだやり足りなかったというのと、みんながまだ続けたいというのもあり、私でもなんとかなるかなぁ、と思って代表になったら…、大変でした。
岩崎:もしやめたら何をしていると思いますか?
小島:普通の人になっていると思います・・
岩崎:今は普通じゃないんですね・・・。
〜会場、笑い〜
岩崎:私は、高校演劇から友達に誘われて始めました。そのあとやり続けたのは、私の中の芝居が、総合芸術というか、なにもかも含んでいるような気がして。これをやっていたらあれもこれもできる、という感じ。結局、芝居が好きなんです!
泊:私が初めて演劇って面白いかも、と思ったのは、高校3年生の文化祭。演劇部がやっていた芝居のラストシーンがすごくカッコよかった。演劇っていいかも、と思って大学から演劇を始めました。大学の演劇部がやっていた野田秀樹の「走れメルス」を観て、わけわからなくて面白かった。そんなわけわからないものに惹かれて始めたんです。
30歳くらいで1度やめようと思ったんです。27歳で劇団代表になって、3年間は頑張るけど、物にならなかったらやめよう、と。でも30歳になる1ヶ月前に賞をとってやめられなくなった。演劇生活23年?大変なことですね〜
福薗:演劇との出会い…、よくわからいんですけど、ちっちゃいときに子供向けのお芝居を観に行くことは好きだった記憶があります。中学校のクラブで演劇部に入り、高校で頻繁に大会に行く高校があるよ、ということでその高校に入りました。最初の年で高校演劇の全国大会を観る機会があって、そこですごい舞台を観て、自分もやりたい、と思って頑張りました。
役者がしたいというのがあってやってきたのですが、いつの間にか台本読んでいるときに頭の中でいろいろと考えていくことにはまってしまいました。それで演劇続けたのかなぁ。
劇団に入って、気が付いたら代表になって手さぐりでやっていくうちに、やりながら、劇団員と意見をぶつけあって喧嘩しながら創っていく過程が面白くなっていきました。
泊:劇団内で喧嘩とかするんですか?
福薗:します。とくに演出とはもめますね。険悪〜な感じではなく、討論ができる感じ。
高椋:一回それをやってみようと、劇団内でやったことがあるんですが、そうしたら意見の違う人が次の日から来なくなってしまって、やめました。
〜会場、笑い〜
福薗:だから辞めていった子もいっぱいいます。そこまで喧々諤々しなくてもいいかなぁ〜、って。楽しくやりたかったのにみたいな感じでしょうか。
泊:うちの劇団では、彼氏が出きて辞めた人がいますよ。すごく楽しそうでした。幸せをみつけたんでしょうね。
〜会場、笑い〜
岩崎:鹿児島は若い人が多いですよね、何を餌に若者を釣ってるんですか?
福薗:高校演劇が盛んなので、そのまま、まだやれる、もっとやれる、と続けていることが多いのかな。
泊:仮屋園くん(劇団LOKEの演出家)が高校演劇にかかわっていることも大きいんじゃないかな。母校に教えに行ったりして。高校演劇って重要ですね。本格的に高校からお芝居始める人が多いので。
あべ:高校生の時に何を観たか、どんな大人に会ったか、というのが影響しますよね。
高椋:僕自身の演劇との出会いですが、もともとはラグビーをしていたんです。ラブビーの名門校に入って、根性がなくて退部して、とぼとぼ歩いていたら、学校の昇降口で稽古をしている演劇部がいた。そこに幼馴染がいて、照明がいないからやってくれ、と言われ、演劇をはじめ、次の公演では否応なく役者になっていました。
続けてきた理由は、環境がやめさせてくれなかった感じ。
高校を卒業してすぐくらいに、顧問の先生が作った劇団に入りました。でもみんな学校のの先生なので、続けていくうちに、出世して忙しくなってしまって活動が続けられなくなってしまい、10年くらい前に劇団崩壊の危機が訪れたんです。僕がやるしかないって状態になって、それまで役者ばっかりやっていましたが、演出もするようになって続けてきました。やりたい人がいる、求めている人がいる以上は、やっていきたい、ということを考えつつ今までやってきました。
福田:いちばん最初の演劇との出会い、小学校3年生の時に「勇者グロリア」をしました。勇者がグロリア、お姫様がカローラ姫。登場人物が全部車の名前なんです(笑)。そのグロリア役でした。それが演劇とのファーストコンタクトですね。中学まではサッカー少年でしたが、サッカーは国見高校があるので勝てない。それでこれから自分の目指す方向は何かと考えたら芸能界だ、と。三者面談で進路を聞かれて、劇団ひまわりがなにかも分からなかったですが、劇団ひまわりに入りますと言いました(笑)。演劇っていうものをほとんど観たことがないのに、高校から演劇部に入りました。
最初の公演がなぜかいきなりミュージカルで、えらいとこ入ってしまったな〜、と思った。でもそのころ、テレビでやってた鴻上尚史さんの第三舞台をみて、汗をかいて叫びながらやる芝居がかっこいいな〜と思って、演劇かっこいい、俺カッコイイ、みたいな感じで続けてきました。
池田:最初は役者をやってたんですよね。なんで役者で芝居に出なくなったの?
福田:自分が作家としてダメだと思った。役者やって演出して台本を書いて、だったら1日24時間を3で割ると、8時間しか使えない。1つなくなればもっと時間を使える。役者やめてみればいいか、と。ある時までは自分が出なきゃ駄目だと思っていた。でも自分が出なくても大丈夫かな〜、という規模の公演があって、その時になんとかなった。なんとかなったなら、書く方と演出に集中できる、と。グロリアのプライドが書く方にスライドしたんです。
続けてきたのは、大学を卒業して1年東京に行って、帰ってきたとき、地元の演劇が全く進歩してなかった。なんだ、長崎は!何やってたんだこの1年、と。その気分や怖さが一番大きいんだろうなと思います。自分がいなくなったらどうなるんだ、という気持ちや責任感だったり。
池田:責任を感じるって、個人にも負担がかかってくるよね。こんなんでやってられるか!とか思ったり。それでも続けているのは何で?
福田:やっぱり楽しいからじゃないでしょうかね。人の出会って、役者に出会って、何かこうして、といえばそれ以上のものが返ってくる。そうやってどんどん成長していく姿を見るのが楽しい。人に喜びを感じますね。
池田:熊本県芸術文化祭で東京の劇団ワンツーワークスの方が来て作劇をしたんです。一ヶ月みっちり稽古して大学生がめちゃめちゃ育った。それで火がついたのか、ユニットが4つくらい生まれて。成長を見守るのが面白いですね。とても楽しみな芽があります。
私の演劇の始まりは、りかちゃん人形ですね。お母さんごっこじゃなくて舞台は全部、芸能界か社交界だったんですけど(笑)。中学生くらいまでやってました。ごっこ遊びが好きだったんです。演劇をしていて、楽しいことと苦しいこといろいろあるけど、そこを忘れないようにと思っています。
続けてきた理由は、自分と対峙すること。その対峙をすることがめんどくさくて面白い。稽古場が好き。人が変化する喜び。
泊:そろそろ時間も迫ってきたので、最後に一言ずつ、私が演劇に出会ってよかったということをお願いします。
高椋:まさにコミュニケーション。演劇をしていなかったら出会えない人に出会えることです。
あべ:いろんなひととと出会って、普段「こんにちは」しか言えない人と現場では心のやりとりをしないといけない。そういうことが楽しいし、それが自分の人間修業。そういうところがいいと思います。
池田:考えることをやめないこと。なんでこうなんだろう?ということを考え続けることが大事だと思います。
岩崎:何をしても何一つ無駄なことがないということ。
泊:もともと人前でしゃべれなかった。頭の中のもやもやをなんとか形にするということで私の場合は映画を撮り、演劇になった。
小島:もともと考えて物を創るのが好き。お芝居も形にしていくこと。思ったとおりになかなかならないけど、そう来るか!と考えも及ばないことを自分に学ばせてくれるのがお芝居。人間って面白いな〜、と思わせてくれるものです。
福田:妄想が大好きで、あの人は何を考えているんだろうと思うことが大好きで、いろんな変なことを考えているのが好きなんですけど、そんなものを形にしても変だと思われない。それが変であるほど面白いと言われる。見方っていろいろあるな、それも演劇のおかげだな、と感謝しています。
河野:福田さんに同感。もし芝居をしていなかったら絵をかく仕事がしたかった。でも、1人で絵を描いているよりも、たくさんの人に出会えるというのは演劇をやっているから。それと、変なことを形にしても、それが褒めてもらえたりして、それは嬉しい。
福薗:今日、ここにいられること。これからどうなりたいか、目標を前に置きながら表現や芝居って何だろうということを芝居を通して考えていくことができるので、やっていてよかったな、と思います。
泊:これで九州演劇人サミットは九州各県を一周しました。6年前に熊本で、ちょっと集まってみようよと思い付きで始まったサミットが、その後各県持ち回りで続いきたことは奇跡的なことだと思うし、各県がいろんな問題意識を抱えて自分のところでもやろうという気持ちがこの一周を生んだんじゃないかな、と思っています。交流という意味で意義のある6年間だったと思います。二周目がどういう展開になるのかはこれからのことですが、二周目のサミットの新たな展開をご期待下さい。
主催等
主催:大分演劇活性実行委員会「おおいた演劇の会」
共催:九州地域演劇協議会、NPO法人FPAP
平成22年度文化庁芸術団体人材育成支援事業