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ゲキトーク〜多田×柴×中屋敷〜サイト

日時
2012年3月10日(土) 16:00〜18:00
会場
ぽんプラザホール
パネリスト
多田淳之介(東京デスロック)、柴幸男(ままごと)、中屋敷法仁(柿喰う客)
進行
高崎大志(NPO法人FPAP)

その1 >>その2 >>その3

今までの活動と作品の方向性について

多田:東京デスロックという劇団を主宰しています。「自分の活動がわかる写真を1枚」ということで、北九州での市民劇「冬の盆」稽古中に「演劇やっていてよかったな」と思った時の写真を選びました(スライドにて『冬の盆』稽古時の写真)。ワークショップの休憩中にタバコを吸っていて帰ってきたら、皆勝手にトランプしていてこんな感じになってた。
2007年から「演劇LOVE」という言葉で、演劇を身近にしたいということで作品をつくっている。演劇に出会って幸せになるんだったらと思って自分の劇団の活動としては、2009年1月『その人を知らず』をもって東京公演を休止した。
理由については気になったら劇団のサイト(外部リンク)を見てください(2013年1月の『東京ノート』より東京公演再開予定)。
また、作品の写真として、富士見市民文化会館 キラリ☆ふじみで上演した作品の写真を持ってきました(スライドにて『2001年〜2010年宇宙の旅』舞台写真)。
このホールは埼玉県富士見市というところのホールで、2010年から芸術監督をしています。
先月には『再/生』という作品をここ、ぽんプラザホールで上演しました。 最近は、演劇を観るってなんだろうと思って、作品によっては上演中の写真撮影やTwitterとかをOKにしてやっています。

柴:愛知県出身で、東京で演劇活動をやっています。「ままごと」という劇団の主宰です。
「東京で演劇をやるんだ」と10年くらい活動してきましたけど、最近はいろんな地域で活動しています。自分としては劇作家でありたいと思っていますが、他地域に呼ばれていくときには、演出的な仕事で呼ばれていることが多い(スライドにて北九州芸術劇場プロデュース『テトラポット』稽古時の写真)。ままごとという劇団での公演はなかなかできていないのですが、今後は、劇団の作品づくりをもっとやっていきたいと思っています。
これはあゆみという作品の写真(スライドにて『あゆみ』舞台写真)で、2012年4月にイムズホールで公演する作品。ままごとと銘打っての公演なんですが、ここにうつっているのは、全員ままごとの劇団員ではないです。半分以上の方たちが東海(岐阜・愛知・三重)の方たち。2010年に愛知県で初演をおこない、全部で3都市で上演しました。今年も3都市で上演する予定です。

中屋敷:僕は青森出身で、小さい頃から、お遊戯会→学芸会→高校演劇というように生まれてからずっと演劇をやってきています。 高校演劇の全国大会ではなばなしい優勝をし、以来、ずっと演劇をやっています。
柿喰う客という劇団でオリジナル作品をつくったり、ミュージカルをつくったり。今は子供とみる演劇作品をつくったり、古典戯曲をやったり、芸能人と一緒に作品をつくったり、中高校生と作品をつくったり、いろんなことをやっています。
この写真(スライドにてトルコ公演時の写真)は、トルコの時の写真。2008年くらいから海外公演をやっていて、海外で遊んでいる時の写真です。もともと東京で作品をつくって上演をしていたんですけども、東京だけで演劇を上演しているというのが納得できなくて、大阪や海外や福岡など、いろんな場所で公演するようになりました。さまざまな場所で通用する演劇をやりたいと思っています。 次の写真は、女優だけのシェイクスピアをやった時のもの(スライドにて『悩殺ハムレット』舞台写真)。「圧倒的なフィクション」を標榜していて活動していて、リアルっぽくないものがおもしろいんじゃないかと思ってやっています。どれくらい圧倒的なものをつくれるかということで作品をつくっています。

柴:この写真おもしろいですね。舞台観てない方にはポーズをとった一瞬の写真のように見えるかと思うんですけど、そうじゃなくて、ずっとポージングしたまま進むんですよね。

中屋敷:そうそう。俳優さんの腰がばっきばきになっちゃって。

高崎:本番のUstream配信もしてましたよね?

中屋敷:やってました。自分の作品は、役者がもっていくような作品。柴くんのは一人の役者が持っていくようなことはしないよね。 共演者のグルーブでたちあげていくというか。

多田:主役がいるというのがあんまりないよね。

柴:僕は作品の方向性に一貫性がないというか・・・北九州でも公演した『わが星』という作品は、ずっと時報をかけ続けていて、会話になったりラップになったりですすめていく作品でした。写真の『あゆみ』という作品は、役をどんどん交代していって女性が生まれてから死ぬまでをやりました。『あゆみ』の初演はシンプルな形でしたが、再演ではダンスというか、だいぶ動きまわる感じになってます。主役がいない作品が多い。北九州芸術劇場プロデュース『テトラポット』で何年かぶりに役名をつけました。あと、途中で役が入れ替わらなかった。お話ではなくて、俳優たちがその場でつくるイメージ、何もないところに何をつくっていくかというのを重要視して作品をつくっている。

多田:どういう作品をつくっているかって、口頭で説明するのはなかなか難しいよね。

柴:多田さんの作品って、最近どんどんセリフがなくなってきてませんか?

多田:僕は戯曲を使わないときと使う時の2パターンに大きく分けてて。ぽんプラザで上演した『再/生』に関しては、戯曲を使っていないので、セリフもなかった。戯曲を使うときはセリフもある。僕は演出しかやらない。『再/生』で俳優たちがしゃべるシーンでも、戯曲を一切書かないで、俳優たちがしゃべってまとめて戯曲化されたものを僕が構成していった。自分の書いた文字を一文字も喋られたくないというか、そうすると気持ち悪いというか・・・。

中屋敷:僕は「女優」が好き。でも、中堅どころの女優さんの出演機会が少ないように思う。特に自分のところでは女優が多いので、そう思うことが多い。そういうのはよくないなあと思う。柿喰う客でやったシェイクスピア作品は出演者が全員女性。今後もコンスタントにやっていきたい。蜷川幸雄さんや野村萬斎さんのつくるシェイクスピア作品は出演者が男性ばかりだが、現代でシェイクスピア作品をつくる活路はないかと考えて、自分は女性の出演者でつくっている。

柴:女性だけでシェイクスピア作品をつくる理由って?

中屋敷:単に女性だけのシェイクスピア作品に観客がどういう反応をするかというのにも興味があるが、ワールドスタンダードとして考えて、このくらいやらないとシェイクスピア作品を上演されてきた歴史に食い込めないんじゃないかと思っている。演劇の歴史って最近どうなってるんだろうと思ってて。最近の日本の演劇は新作主義だと思う。 シェイクスピアやチェーホフなど古典を読んでいなかったら、他の国に行ったときに日本の劇作家・演出家は国際競争を戦えるのかと思った。 僕もまだ若いのでたくさん勉強をしなくてはいけない。

多田:海外で活動したいなら、古典は読んでないとだめだと思う。でも国内だけならいいんでは?

中屋敷:国内でいうと、最近は、芸能人と呼ばれる人と作品をつくることもある。その時は演劇作業をあまりしていない。ある枠にはまれば「舞台をやりました」みたいになってしまう。 僕らの語る演劇と芸能分野の方の演劇の差がすごく大きくて。昔はもっと近かったんじゃないか。

柴:芸能人と演劇人がもっと混ざり合えばいいということ?

中屋敷:芸能人としていい俳優の方が、枠にはめられた演劇しかできなくて、それを演劇だと思ってその後も活動していくのかと思ったらかわいそうだなと思う。
蜷川さんは芸能人をすごく使うけど、芸能人をつかうのがすごくうまい。演劇のプライドを持って芸能ともうまくやれるような、ああいう人がもっといればいいと思う。 自分は今、芸能人や声優さんと一緒に舞台をつくるなかで、自分の文脈で「演劇ってこうだよ」というのを伝えられたらと思っている。

多田:演劇が商品か商品でないかとかいう話だよね。商品と芸術の境目というか、同居できるのかというか。Perfumeみたいな人が出てくればいいってこと?

中屋敷:ああ!!そうかも。50席くらいの劇場の作品しか観ない人にも大劇場の作品を観る人にも受け入れられるような。

多田:Perfumeはマスなんだけど、音楽関係者のファンも根強い、みたいなこと。

中屋敷:そうそう。 大衆系・少数系とかわけてしまわず、観客が行き来できるようにできたらと思う。




(『冬の盆』稽古時)

(『2001年〜2010年宇宙の旅』舞台写真)





(北九州芸術劇場プロデュース
『テトラポット』稽古時)

(『あゆみ』舞台写真)





(トルコ公演時)

(『悩殺ハムレット』舞台写真)



























観客動員と社会的な評価について その1

高崎:観客動員についてどれくらいこだわりがありますか?

多田:数を気にしたことはない。

柴:前の公演よりも次の公演が少ないというのは問題ないということ?

多田:そうです。人数の話ではないと思う。 東京にいた頃は多少考えていたけれど。

柴:後で中屋敷くんには叱られるかもしれないけど。僕も動員数はそこまで気にしていない。客席を満席にはしたいと思うけど。いい作品をつくっていればお客さんは増えていくと思っていて、赤字にならないように、次の作品をつくれるように、集客を目指す。1万人に見せたいということは、なくはないけど人数を想定して考えるとかはない。 次に作品をつくった時にお客さんがどれだけきてくれるかというのが大事。 どこでどういう作品をやるか、誰に観てもらうかだと思う。

多田:東京デスロックは観客が少ない。日本の劇団で一公演あたりの動員が1000人いってないけど、東京で生活している演劇人は僕しかいないんじゃないかな。 小さい所でばかりやっているのもあるかもしれないけど。

中屋敷:一公演あたりの動員が2000人くらいの劇団は若手で柿喰う客だけなのに、取材とか評価が全然されなかったときは東京でやるのやめようかと思った。2000人の観客が観に来てくれたけど、演劇界では評価されてない、という時に、柿喰う客の公演では観に来てくれた2000人が期待しているものをみせられるよう、頑張らなければいけないと思った。
いい作品をつくったら観に来てくれるのと違う動員もあるんじゃないか。どこかの劇団の作品を観ることで幸せになる客層っていうのもあるのでは。 例えば、演劇集団キャラメルボックスとか劇団☆新感線とかは、もう公演というかお祭り。自分は、キャラメルボックスを観に行った時、観る前から泣きそうになる(会場笑)。

柴:作品をどこでやりたいかによると思う。劇場が大きくなければ、動員しようにも方法がない。自分の作品がどういう大きさの劇場でやれば伝わるのか、というところで逆算して予算立てていくしかない。 ということで、おのずと演劇活動のやり方も決まってくるんじゃないかと思う。

多田:場所にお客さんがいると自分は思う。公演をやる、と決めるときにはいろんな理由があるだろうけど、僕は「人」で決めている。劇場の規模や機構ではなく、誰が劇場を経営してるかとか、プログラムを考えているかとか。そういう「人」についているお客さんが劇場に来てくれたりしているので、そういうお客さんたちに作品を見せられたらと思う。観客の想定は場所によって変わってくる。基本的に誰にみせてもいいと思っている。
キラリ☆ふじみでレジデントカンパニーを3年くらいやっていた時に、演劇ファンも地元の農家の人も子どもいるという中で、そういう、いろんな客層に観てもらうことに慣れた。 東京デスロックのお客さんは平均年齢が高い。 若者はあんまりわざわざ観には来ないなあと思う。

高崎:先程中屋敷さんのお話しで「評価されてない」ということだったが、中屋敷さんの劇団は評価されていないということはないと思う。他に「社会的に評価・認識されたな」と感じたきっかけは皆さんありますか?

柴:岸田國士戯曲賞をいただいたときには、「あと1、2年は演劇やっていていいのかな」と思った。
「まだ演劇をつくっていていい」と言ってもらえたような気がした。目の前のお客さんの拍手とか、目に見えて動員が増えていくとか、「お客さんに伝わって認められている」と自分が実感しないと、いくら賞とかもらってもつらいと思う。 毎回それを味わいたくてやっているが、「ずっと続けられる」とはなかなか思えない。

多田:続け方にもよるけど、その続け方でいいのかと自分で判断しないと難しいね。

中屋敷:僕は2007年にFPAPの観劇ディスカッションツアーで観に来てくれたのがターニングポイントの1つ。その公演の時は出演者4人で1000人の観客動員だったんだけど、だれも褒めてくれなかった。 福岡からきた劇作家・演出家がすごく褒めてくれた。それでまだ逃げ道があるぞ、と思った。 1000人に観に来てもらえた、というのと、東京以外にもまだ出会っていないお客さんは日本中にいるんだと。東京以外でどう評価されるかわからないのに、東京のことばかり言ってたらいけないな、と。続けていこうというより、たくさん道はあるなと思った。 そこで、翌年から大阪進出を考えたり。

多田:僕は、何かきっかけがあってというよりは、自分は演劇を続けるパワーというのをチャージし続けていると思う。ワークショップとか公演をしている中で、奇跡の瞬間みたいなのがあって、感動したりこれは恩返ししないとなと思ったりすることがある。 それがつきたらやめるような気がする。東京公演やめたときは、「やばい、演劇続けるパワーの貯金がつきるかも」と思って別の地域に行くようになったり。

中屋敷:多田さんは幸せがあるから続けている感じですよね。柴くんは賞とったときはすごく幸せだったわけじゃないでしょ?賞は今までやってきたことの評価であって、公演をやっている時とか稽古中の方が幸せなんじゃない?

柴:そうですね。地域でワークショップで呼ばれたりして、いろいろな続け方があると思ったときはとてもほっとした。その時までは東京で成功するか失敗するかみたいなことしかなかったけど、続けていく中でいろんなやり方があるというところで視野が広がってきた。






































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主催・協力等

主催:NPO法人FPAP
後援:九州地域演劇協議会
助成:(財)福岡県教育文化奨学財団


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