参加者のレポート
山口大器(北九州|劇団言魂)
今回、戯曲ディスカッションツアーに参加させていただきました。
まず五作それぞれに対して魅力や優れている点について話し合いました。数名でディスカッションをしていると、戯曲に対して新たな発見をたくさんすることができました。自分がなんとなく感じていたことを他の方が言語化してくれたり、一人で読んでいたときには気が付けなかったことや、自分とは違う見方が出てきたり。
(自分の考えていることをうまく伝えられないもどかしさを感じたと同時に、それを解消していく痛快さも感じました)
そして、公開審査会を見学しました。高名な劇作家の方々がそれぞれの戯曲についてコメントをしているときに、ディスカッション内容と似たことを話されていて、変な話ですが、「あ、間違ってなかったのか」と感じました(そもそも間違いは無いのかもしれませんが)。それに加え、更に明確に、深く掘り進めた議論がされて感心するばかりでした。
また、今回のツアー全体を通して「射程」と言う言葉が強く印象に残っています。戯曲を通してどのような世界を描こうとしているのか、どこまで行きたいのか、みたいな意味だったと思います。この射程の設定と、実現できているかが戯曲を評価するにあたって一つの大きな指標になると思いました。
戯曲についてここまで意見交換をしたり「どこがどういいのか」を考えたりしたのは初めてでした。だから、自分以外の目線を共有する、さらに劇作家の方のお話を聞くという機会はとても貴重な体験でした。作劇をキチンと教わった事のない自分にとって、勉強になりました。
長野哲也(福岡|とんこつプロジェクト)
今回のディスカッションツアーに参加は自分にとってとても貴重で、有意義な時間だった。
劇団内で一つの戯曲の質を高めるための話し合いというのはよくあるかもしれないが、作家同士が集まって複数の戯曲について語る場というのは中々なく、それぞれがどのような観点で劇作をしてるのか、作品をどのように読み解いているのかを知ることで、作品を評価するための「新しい視点」を発見することができた。
また事前にディスカッションをした上で審査会に臨んだことで、自分が読んだだけでは気づかなかったり、うまく言葉にできなかった作品の良い点や技術的に優れている点を、審査員の方々がそれぞれの言葉で表現、評価する部分がとても勉強になった。
他にも、ディスカッションの形式と発表会の形式が似ていたため、それぞれの審査員が推す作品によって、自分と似た感性を持つ作家を知ることができた。今後、自分の感性を磨くために登壇されていた作家の方の作品を研究することで、さらに自分の筆力を高めることができると思う。
そして最後に、福岡の人間である私にとって、実際に東京に行って審査会を観るという機会はまったくなかった。あの場にいたことで、改めて東京という場所の演劇の熱を感じ取ることができ、自分自身も作品を書いて評価されたいという欲求が沸き上がってきた。
作家としての原動力という意味でも、勉強という意味でも、大きな力になった企画だった。本当にありがとうございました。
ルーシー・ラブグッドウィル(大分|劇団不在)
今回、戯曲賞の選出を前提とした議論を行った。そのため、技術的に優れている点が議題の中心となった。それぞれ個性的な戯曲だったため、技術の比較は難しかったが、良い議論が出来たと思う。
それぞれの作品自体の魅力や、現代社会に対しての戯曲的価値にまで及んだ議論へと発展した。自分の好みからはみ出た部分で戯曲を評価して、具体的に言語化して語り合うという経験はこれまでなく、貴重だった。
最終選考へ残った五本の戯曲をディスカッションツアーチームで議論し、最優秀戯曲賞を選定する過程を疑似体験するといった行程をたどった。
まずはそれぞれのメンバーが戯曲の魅力と技術的に優れている点を解説し、それから各メンバーが持論を話したり、質問をしていくという流れで進んだ。
魅力に関しては語るべきところが多く、準備は容易かったが、技術に関しては言語化に苦労した。おもしろく惹かれる部分があるけれど、どういった理由でそうなっているのか、といった分析に自信がなかったためである。
直感で惹かれるところは主観的なことであり、自信を持って語れるが、技術に関しては自分の考えに自信がなかった。
ツアーが終わった今わかったのは、その考えが正しいのかどうか自体が一つ問題となり得たわけで、議論を深めるべきであったということ。疑問や持論をもっと用意して臨むべきであった。疑問点は議論されて初めて、技術として昇華されていくのではないだろうか、と感じた。
我々のチームでの疑似選考結果は「もものみ。」という結果に終わった。
私は最後まで「the Last Supper」を押していたのだが、議論の過程で「もものみ。」の選考に納得をした。人物のかき分けと出捌けの管理の技術が高く評価された部分の一つだった。 「the Last Supper」は理解出来ていない部分が多く残されてはいたが、直感的にとても魅力的だった。魅力的だという部分をうまく表現できず、悔しいところであった。
なぜ?の部分の掘り下げが甘かった。今後戯曲について考える際にはそのなぜ?の部分をもっと掘り下げて論理的に考えたく、課題となった。
今回の議論で特に印象に残っているのは、書きたい内容を全面に出してしまうと、作品全体が陳腐化する危険性があるといった内容の話である。
どうしても書きたいことを先行させてしまい、物語がうまく展開しない、登場人物から魅力を感じないといった現象にぶち当たっていたので、今後執筆する際は気を付けるようにしたい。
ただ、上演を前提とした場合、演出上必要なギミックである、もしくは何らかの意図を持っているということも考えられる。ただし戯曲という形態で発表した場合は、何らかの方法で意図を明確にしなければ、読者が納得しないということが明らかに分かった。戯曲賞のような作品を比較する場では、特に明らかであった。
説明をせずに語るというのは基本的なことかもしれないが、注意深く読まれるという事を念頭に置いて、今後の執筆活動への課題としたい。
スタッフのレポート
しとろんらびっと「戯曲ディスカッションツアーレポート〜総括〜」
FPAPスタッフとして同行した岩崎の詳細なレポートです。候補作5作品の選考の模様も掲載されています。
さくてきブログ2「新人戯曲賞と戯曲ディスカッションツアーで議論になったこと」
FPAPスタッフとして同行した高崎のブログです。
(以下は募集時の情報です。)
FPAPでは、劇作家のための戯曲ディスカッションツアーの参加者を募集しています。
内容
劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作について、事前に読んでもらった上でご参加いただきます。当日は参加者間で感想や意見の交換を行い、その後に公開の最終選考会を見学します。
日程
2016年12月11日(日) 午後4時から午後11時(予定)
※FPAPからスタッフが同行します。
募集人数・対象者
九州に拠点をおいて活動する劇作家
劇作家3,4名程度での実施を考えております。
(※九州外の劇作家の方も自己負担での参加を希望される場合は歓迎いたします)
(※定員に達しましたら応募締め切りと致します)
参加費用等
参加費:3,000円
参加費に含まれるもの|優秀新人戯曲集、LCC航空券、宿所はFPAPにて負担・手配します。
その他の費用(市内交通費、飲食費等)は、各自でご負担ください。
※ 福岡以外からの参加の場合は、「福岡までの移動費用の一部を負担」もしくは「各地域から東京へ直行するケース」で低廉な方を決めるものとします。お気軽に相談ください。
※ 直接の現地入りも可能です。
※ 宿所は、都内の宿所にも使えるスペースと交渉中です。自己負担にて別に宿所を確保していただいても構いません。
※ LCCのチケットはキャンセルがきかないため、チケット予約後のキャンセルはチケット代相当額をご負担くださいますようお願いします。やむを得ない理由につきましては半額をFPAPにて負担いたします。
(11月19日追加)
※ 自己負担により、前入りすることや延泊することも可能です。この場合も最安の航空券額を別途支払います。その際は領収書の取得をお願いします(宛先:NPO法人FPAP)。
※ 受託手荷物がある場合は自己負担にてお願いします。
参考 http://www.jetstar.com/jp/ja/help/articles/carry-on-baggage
スケジュール(予定)
2012年12月11日(日) | |
午前 | 福岡・大分空港集合 (LCCでは時間に間に合う便がないようですが、他空港をご希望の場合は、ご相談ください) |
16:00 | ディスカッション(都内にて) |
18:30 | 劇作家協会新人戯曲賞 公開審査会 見学 |
終了後移動 | |
21:00〜 | ディスカッション 後半 |
2012年12月12日(月)自由行動可 | |
午後便にて、九州の空港へ移動 | |
解散 |
※ディスカッション前半からディスカッション後半までの時間は、集団行動となりますのでご了承ください。それ以外の時間については、原則自由行動となります。
参加にあたって
・最終選考の戯曲を読み、各戯曲の特徴や優れた点などについて考えておいてください(優秀新人戯曲集は11月末までに送付予定)
・参加前と参加後のレポートをお願いします(別途、FPAPより依頼します)。
申し込み方法・問い合わせ
申込み方法:
右のフォームからお申し込みください。申し込みフォーム
フォームがつかえない場合、以下をFPAP(info☆fpap.jp(☆ を@に替えてください))までメールで送付ください。
1.氏名
2.年齢
3.メールアドレス
4.携帯電話の番号
5.所属(特にない場合は「なし」で構いません)
6.これまでの執筆、戯曲賞応募実績(劇作家としての活動を中心にして簡単にご記述ください)
7.今後の活動予定 (劇作家としての活動を中心に簡単にご記述ください)
8.応募理由・ディスカッションツアーに期待することなど
9.スケジュールについての要望
折り返し確認の連絡のメールをいたします。
(36時間以内に確認連絡がない場合は、お手数ですが電話(092-262-5027)にて確認をお願いします。)
LCCのチケットはキャンセルがきかないため、チケットを予約する前に改めて確認いたします。
募集締切
原則先着順で、定員に達しましたら募集を締め切ります。
参考
第22回 劇作家協会新人戯曲賞
http://www.jpwa.org/main/drama-award/prize(外部リンク)
クレジット
主催
NPO法人FPAP
協力
(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
九州地域演劇協議会