10/8と9にそれぞれ同内容で、1日のワークショップを行いました。
参加者のほとんどが初心者・未経験者ということで、
最初に戯曲とは?についてのレクチャーから。
レクチャーでは、
・戯曲と小説の違いについて
・戯曲は、特別な人だけが書くものではない。ということ
・自分の中のリアリティについて
という3点を中心に、樋口さんの経験によって得た、
「戯曲とは?」についてお話がありました。
・戯曲と小説の違いについて
「何が違うのかなと考えたときに、観客がどこにいるか、ということだと思う。」と樋口さん。
小説の読み手は一人で、読み手と作家が一対一です。
戯曲は、読み物としても成立しますが、上演されるために書かれるものが多いです。上演されるのを前提とされた戯曲の場合、上演する演出家や役者がいないと世に出ません。この戯曲をやりたい!と思う人がいて、戯曲をほりおこして役者の体を通して立体化し、劇場に来てもらわないと見れない、という特別さがあります。
また、戯曲ー演出・役者などー観客と、戯曲を演出・役者などが立体化することで表現されるので、戯曲の言葉は演出家や役者が違うと、ずいぶんと印象が変わってきます。
樋口さん:劇作家が戯曲を書くときに、どんな観客が見るかははずせないな。と思う。戯曲の場合は、自分の悩みを言ってそうでも、観客に見せることを意識していると思う。小説と戯曲の大きな違いは、戯曲は生身の役者をとおして、生身の人間がみるものということ。書いた時の印象と役者が肉声で言った時の印象は違う。文字でいい言葉書いた!と思っても、役者の体を通すと魅力ないことも。肉声でだしていいものか。と考えて書いている。
・戯曲は、特別な人だけが書くものではない。ということ
「一番大事だと思う!戯曲を書くというと難しいように聞こえるかもしれないけれど、文章を書くということは特別なことではない。」と樋口さん。 田植えの歌があったり、平安時代では和歌の文でやりとりをしていたりなど、人には物語を語る遺伝子がある、人間は表現しようという気持ちや細胞を生まれたときから持っている、というのが樋口さんの考えだそうです。
樋口さん:波乱万丈なものじゃなくても、日々生きていれば、事件は起きている。家族も恋愛も友情もみんな物語。「自分の人生は平凡だ」と思うかもしれないけど、劇的な人生じゃない人はいない。誰にだって劇的な物語は書ける。「平凡だ」と思っていても、年数がたつと思い出になり、美化→物語化している。だから、誰にでも書ける!人に手紙を書くくらいの気持ちで、戯曲を書いて全然いい。
・自分の中のリアリティについて
「『前書いたことがあるけど、うまく書けなかった・・・』という人は、いきなり大きすぎるテーマで書いちゃっていることが多いです。」と樋口さん。
子どもはボキャブラリーがつたなくても、「今日こんなことがあった!」と話したり、気持ちを伝えられたりします。それは、自分で考えていることだから。何も感じずに生きている人はいない。まずは、自分が何について考えているかを考えてみると、書きたいことが見えてくることがある、というお話がありました。
樋口さん:日々生きていると日常におしながされて、考える機会を持てないが、日常の中に自分のリアリティはある。
自分が今、興味があること。海外旅行とかでもいいので、自分にとってリアリティがあることから物語を考えていけたらと思う。自分→家族→恋人→地域→国→世界・・・・・・と、自分について考えると、どんどんひろがっていく。
自分と同じ人は、この世に絶対いないので、同じ設定でも、人によって全然違うものが書きあがります。
ということで、休憩の後、早速、短編を書いてみよう!ということに。
それぞれ共通の登場人物・場所の設定で、2〜3分の超短編の戯曲を書いてみました。
樋口さん:書式は自分の書きやすい形式で大丈夫です!
ただ、場所や登場人物については、自分の頭の中でしっかりと想像してみてください。また、誰に向けてこの話を届けたいか?ということも考えてみて。そうすると、自然に登場人物が動き出すと思います。
1時間ほど書いた後、みんなで読んで発表。
同じ設定でも、書く人が違うと、作品の雰囲気や話の内容もまったく違います。
SF風や恋愛物・家族の物語など、いろいろな戯曲ができあがりました。
一つ一つの戯曲について、
「わかりやすくないことはだめじゃない。言葉で全部説明しないから、考える余白がある。観てる方が考える余白があるのが、すてきなところだと思った。」
「「私の言葉で書く!」とか言うけど、日本語はすでにある。「私の言葉」はない。でもそれをチョイスする時にその人の個性はでてくる。」
「一切会話してないんだけど、こういうのって日常ではあること。演劇では、会話しないといけないという思い込みが。出てくる登場人物がお互いに会話しないのは、見ている人がいるからなりたつ芝居。客観的に見てると「あるある!」と思う。」
「戯曲は、物語を伝える情報より、どういう人物がどういう状況でうごいているのか。がみえるといい。動くには動機が必要。書いてあると役者は探す。説明じゃなくても、設定を明確もって書いていると、役者が行間を読んでくれる。」
など、講師の樋口さんによるコメントが。
普通の生活で生きてる私たちが、ちょっとした時間で思っているものを言葉にする。読んでもらう。それだけで交流がひろがる。戯曲を書くことが特別なことじゃないということがわかってもらえたらいい。というお話がありました。
樋口さん:興味があって、また書いてみるなら、たくさんのお芝居を見ることをすすめます。あと、戯曲をたくさん読んだり。
見れば見ただけ、読んだら読んだだけ、自分の中に蓄積されていく。見慣れていくと、よりよい批評ができるようになっていく。批判じゃなく、客観的・的確に作品を観る力が。それって、よい観客ということでもある。
でも、それはたくさんの数の作品を見ないとできないこと。
そして、よい観客は、よい作り手にもなる。活躍するよい表現者は、絶対によい観客でもある。
それに、生活の中でたくさん芸術に触れるのは損じゃないと思う。
この機会に、お芝居を観る・やるということに興味を持ってもらえたらうれしいです。
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